最新記事

発想術

アイデアのプロが愛用する考具「マンダラート」とは何か

2017年4月4日(火)18時12分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

 書いたばかりのマンダラの周辺セル、その一つひとつをさらに展開させます。

 次のマンダラの真ん中には「取っ手?」と書きます。このコンセプトを新商品に発展させるには、何が必要でしょうか? この問いに対して周辺の8つのセルを再び埋めていきます。

「指が2本入る」
「人間工学」
「子どもでも持ちやすい」
「日本調のデザイン」
「滑らない」などなど。

 もし事前に「取材」ができていたらもっと良い要素が見つかるかもしれません。

 取っ手といえば、この前雑誌で見たユニバーサルデザインも関係あるかな? と思い出して、「ユニバーサルD」と埋める。

 ユニバーサルデザインで持ちやすい......右手でも左手でも持ちやすいか? と思いついて、「RもLもOK」と書き込む。

 そういえばこの前入ったカフェでカフェオレを頼んだら取っ手のない大きなボウルみたいなのが出てきたな。「フランスって取っ手のないカップで飲むんです」とか店員が言ってたけどホントかいな?

 で、「取っ手ナシ」。

 これで8つ。

 すでに取っ手だけでも8つのバリエーションがある商品コンセプトが生まれています。この後は「取っ手 その2」に行ってもよいですし、お次のコンセプト案「カラーリング」を展開させても。

 8つの切り口があって、それぞれをまた8つ展開できたら8×8=64の新商品企画につながる要素が生まれたことになります。単純計算ですが、これらの要素の数学上の組み合わせの可能性は億どころか兆の単位でも収まりません! とんでもなく効率的に、新しいアイデアを数多く作ることができるのです。

 もちろん、本当の新商品としての企画になるまでにはコンセプトの検討と選択、そして実現度のチェックが必要ですが、その前提となる数多くの選択肢をいとも簡単に生み出すことができる考具がこのマンダラート。

 雑誌で見たユニバーサルデザインの話や、たまたま飲んだカフェオレの体験もヒントになってくれました。おそらくマグカップについて考えることがなければ、あの取っ手のないボウルのことは思い出さなかったでしょう。

 普段の生活で積み重なった記憶を引っ張り出し、組み合わせるだけでも、新しいアイデアがたちどころに誕生するのです。当然ながらマグカップについての深い知識があれば、またマグカップが使われるときのシーンを思い浮かべられたら、さらに拡がるはずです。

 さらに男性と女性とでは出てくる言葉が違うはずですし、気がつく点、改良して欲しい点も違うはずです。2人で持ち寄ったら、収拾がつかないほどのアイデア数になりそうですね。自分1人だとしても七色いんこ(考具その4)してください。指がもっと小さかったら、もっとごつかったら......どんなマグカップが売れるんでしょうね?

 必要なのは、8本の線が引いてあるだけの紙。

 この不思議なマンダラートはデザイナーの今泉浩晃さんが開発された手法です。

【参考記事】プライベートジェットで「料金後払いの世界旅行」を実現する方法

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

ネクスペリア中国部門「在庫十分」、親会社のウエハー

ワールド

トランプ氏、ナイジェリアでの軍事行動を警告 キリス

ワールド

シリア暫定大統領、ワシントンを訪問へ=米特使

ビジネス

伝統的に好調な11月入り、130社が決算発表へ=今
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 5
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    筋肉はなぜ「伸ばしながら鍛える」のか?...「関節ト…
  • 9
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 10
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 10
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中