最新記事

トルコ

トルコで警官9000人が停職処分 : クーデター未遂後の言論状況をジャーナリストたちが語る

2017年4月28日(金)19時50分
小林恭子(在英ジャーナリスト)

イタリアの「ラ・スタンパ」紙に寄稿するマルタ・オッタビアニ氏の話を聞こう。同氏はエルドアン大統領についての本を書いたジャ―ナリストだ。

事件ですべてが変わった

ottabia170428.jpg
トルコで働くイタリア人ジャーナリスト、オッタビアニ氏 IJF

マルタ・オッタビアニ氏:2003年から13年まで、トルコで生活していた。トルコで外国人ジャーナリストとして働くことは容易ではなかったが、2013年までは怖いことはなかった。今は恐ろしいと思い始めている。それは、昨年夏のクーデター未遂事件以降、すべてが変わったからだ。

外国メディアは当局との関係で苦労する。ジャーナリストは仕事に直接関連して投獄されるわけではない。テロリズムやテロリズムのプロパガンダを行ったということで投獄されてしまう。

正直に言うと、このジャーナリズム祭の後でトルコに再入国できるかどうかも分からない。確実なことがない。

記者証ももらいにくなった。街中で撮影しているだけでも当局から質問を受けることもある。

でも、最大の問題は、外国人ジャーナリストに対するトルコ国民の態度がすっかり変わってしまったことだ。

最初に私がトルコに行ったとき、トルコの国民は外国人ジャーナリストに疑り深い態度を見せたが、今は怒りの感情をぶつけてくる。

エルドアン大統領は反EU、反西欧の姿勢を露わにしており、これが市民の態度に現れているのだろうと思う。国民投票に向けて在ドイツや在オランダのトルコ住民の支持を得るため、大統領はドイツやオランダをひどい表現を使って罵倒した(注:ナチズムと関連付けた)。反EU感情を作り上げるためだったと思う。

クーデター未遂事件以降、多くの商店街の経営者が当局への情報通報者になった。インタビューを行うのは非常に難しい。話を聞けば、すぐに警察に通報され、警察官がやってくる。

携帯電話での会話やツイッターなどソーシャルメディアの活動も細かく監視されている。

私が愛するトルコがこんなにも急速に変化している。解決策が見えない。

外国人ジャーナリストは「敵」と見られる。邪魔な存在だ。これからも仕事は続けるが、非常にやりにくくなった。

トルコは今、「ポスト真実」(真実を重要視しない状態)にいると思う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:ブラジルのコーヒー農家、気候変動でロブス

ワールド

アングル:ファッション業界に巣食う中国犯罪組織が抗

ワールド

中国で「南京大虐殺」の追悼式典、習主席は出席せず

ワールド

トランプ氏、次期FRB議長にウォーシュ氏かハセット
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 5
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 6
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 7
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    「体が資本」を企業文化に──100年企業・尾崎建設が挑…
  • 10
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中