最新記事

中国

「無風」の中国全人代 習近平への権力集中強まる

2017年3月17日(金)10時49分

 3月15日、中国の第12期全国人民代表大会(全人代)第5回会議は、全く波乱のないまま台本通りに進み閉幕した。写真は習近平国家主席。北京で撮影(2017年 ロイター/Thomas Peter)

中国の第12期全国人民代表大会(全人代)第5回会議は、全く波乱のないまま台本通りに進み、15日閉幕した。運営管理の徹底ぶりから習近平国家主席に権力が一段と集中している様子が読み取れ、秋に予定される共産党大会では指導部入りする習氏の側近が増えそうだ。

10日間の会期中に指導部入りの可能性のある人物が表舞台に現れることはなく、外国の報道関係者は蚊帳の外に置かれ、憶測は抑え込まれて、大会は無風のうちに終わった。

大会初日の5日に李克強首相が社会と経済の安定を最優先課題に挙げて全体のトーンを決めると、あとは議論や指導部への批判などは一切議題に上らなかった。

在北京の西側外交筋は「共産党大会を前に、習氏は予想外の出来事は何物も望んでおらず、全人代を目立たないようにするために全力を挙げた」と話した。

共産党大会は5年ごとに開かれ、7人で構成される中央政治局常務委員会など党の最重要組織の人事が行われる。習氏にとっては国家主席就任以降にどの程度権力を盤石のものにしたのかを示す機会となる。

習氏が国家主席になる直前の2012年に開かれた全人代は、重慶市のトップだった薄熙来氏の汚職スキャンダルに見舞われた。

その後、習氏の潜在的な対抗勢力は服従を強いられ、今回の大会では気を散らすような出来事も表立った批判も出なかった。

メディアは昨年、党の方針に沿うとの忠誠を示すよう命じられ、インターネットの検閲は徐々に強化された。人権派弁護士も取り締まりの対象となり、批判の声は封じ込められた。さらに習氏は人民解放軍にもにらみを利かせている。

大会では南シナ海を巡る政策など議論を呼びそうな議題は取り上げられなかった。

秋の共産党大会での人事に関する厳しい質問は事前に止められた。またこれまでと異なり、当局への質問が許された外国人記者はロシア1国に限られた。

習氏は憶測をあおるのを避けるため、広東、重慶、貴州など中央政治局常務委員の候補になりそうな人物の出身地の代表団との会談は明らかに避けた。

習氏がこの5年間にどの程度政治的な権限を手中にしたかは、習氏が党の慣例を破って人事交代で側近を残すとともに、反汚職運動を進める王岐山氏を常務委員にとどめられるかどうかが重要なバロメーターになる。

無風の中、李克強首相の15日の発言だけがメディアをざわつかせた。李首相は舞台を去る際に「また会いましょう。その機会があれば」と述べ、首相に残留する上で習氏の支持を得ていないとの見方が浮上した。

(Ben Blanchard記者、Philip Wen記者)



[北京 15日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個

ワールド

「トランプ氏と喜んで討議」、バイデン氏が討論会に意
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 6

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 7

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    「性的」批判を一蹴 ローリング・ストーンズMVで妖…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中