最新記事

BOOKS

フィリピンパブの研究者がホステスと恋愛したら......

2017年3月9日(木)19時06分
印南敦史(作家、書評家)

つまり、当初はダンスや歌手などの試験に合格し、フィリピン政府から「芸能人」と認定してもらえなければ来日できなかったということ。フィリピンホステスは歌やダンスがうまいといわれるのは、そんな経緯があったからだという。ただし現在は、状況が異なるようだ。


 興行ビザは2005年に規制され、今では興行ビザで出稼ぎに来るフィリピン人はほとんどいない。そのため、パブで働いている若いホステスは、裏の組織の手配で日本にやってきている。(24ページより)

だから、指導教官がすぐにやめろと止めた理由もわからないではないのである。

【参考記事】ヤクザになった理由を7人の元暴力団員に聞くと...

ちなみに、フィリピンパブが中年男性の支持を集めることについては、明確な理由があるそうだ。常連の典型は「子どもは独立、離婚して独身、自由になる金がそれなりにある50~60代の現役男性」で、ここではその例として「クロダさん」という男性の発言が引用されている。


 クロダさんは、自分がフィリピン人にモテるタイプだと思うという。
「日本人の若い子がいるキャバクラだと、オレみたいなおっさんは相手にしてくれない。でもフィリピンパブは違う。オレでもモテるんだ」(66ページより)

でも残念ながら、そして当然ながら、ホステス側の考え方はやや異なる。


 フィリピンパブで働く、ミカのようにマネージャーとの契約がある契約ホステスは、売上ノルマをクリアしなければならない。マネージャーとの間に契約がないフリーのアルバイトホステスも日本での生活費や、フィリピンへの送金があるから、一生懸命、面倒な客でも、うまくかわしながら店に来てもらおうとする。(67ページより)

クロダさんのようなおっさんが聞いたらがっかりしそうな話だが、しかし結果的に双方が満足できる関係が構築されているのだから、それはそれでいいのかもしれない。

ところで、著者は愛知県春日井市出身で、本書の舞台になっているのも名古屋である。名古屋は風俗が盛んで、フィリピンパブが多いことでも知られる。本書によれば、愛知県が工業地帯であることも、フィリピンパブの客に中年男性が多い理由のひとつだ。

トヨタをはじめとする大企業のサラリーマンは接待という名目で、会社の経費を使って高級クラブやキャバクラに行くことができる。それに対し、フィリピンバブに通う客は高給取りではなく、建設現場の労働者やタクシー運転手、従業員数人の会社の社長さんが大半だというのだ。

【参考記事】ゲイバーは「いかがわしい、性的な空間」ではない

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ウェイモ、リフトと提携し米ナッシュビルで来年から自

ワールド

トランプ氏「人生で最高の栄誉の一つ」、異例の2度目

ワールド

ブラジル中銀が金利据え置き、2会合連続 長期据え置

ビジネス

FRB議長、「第3の使命」長期金利安定化は間接的に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中