最新記事

火星移住

人工磁場で太陽風防ぎ、火星を居住可能に:NASAが新計画を提案

2017年3月7日(火)17時30分
高森郁哉

かつて火星にも磁場があったという… Credit: NASA

将来火星を人類が居住できる環境にするため、火星と太陽の間に人工的な磁場を発生させ、太陽風を防ぐことで火星の周囲に大気層を作る――。そんな大胆な計画を、米航空宇宙局(NASA)の科学者らがこのほど提案した。

太陽風を防ぐとなぜ環境が改善するのか

NASAは2月27日から3月1日にかけて、「惑星科学ビジョン2050」と題したワークショップを開催。火星の環境を改善する計画(PDF)はこのなかで提案された。

火星には現在ごく薄い大気しか存在しないが、かつて液体の海に覆われていたと考えられ、地表の一部や地下には大量の氷があることがこれまでの調査でわかっている。

太陽から放射される太陽風には高エネルギーの粒子が含まれ、強い浸食作用により火星の地表で蒸発した水蒸気を吹き飛ばしてしまう。この太陽風を人工磁場でさえぎることができれば、大気の損失が止まり、シミュレーションによると数年のうちに気圧が地球の半分ほどに上昇。気温も摂氏約4度に上昇し、北極の極冠にある二酸化炭素の氷を溶かすようになる。この結果、大気中の二酸化炭素が温室効果をもたらし、さらに火星の氷を溶かして川や海の形成を助けるという。

人工磁場を保つ方法

では、どうやって長期間にわたり宇宙空間に人工磁場を保つのか。NASAの提案では、火星と太陽の重力が均衡するラグランジュ点の1つ(L1)の位置に、人工的に磁場を発生させる装置を宇宙船で運んでから「置く」ことで、その後は火星と太陽の間で相対的な位置を保ち続けるという。

【参考記事】2117年までに火星都市を建設:UAEが計画発表
【参考記事】人類共通の目標に大きな一歩、NASAが地球と似た惑星を7つ発見

NASAが示したイメージ図によると、この磁場発生装置の影響により、磁気鞘(しょう)、磁気圏界面、磁気圏尾という3層のシールドが出現。これらのシールドにより、太陽風の浸食作用を大幅に低減できるとしている。

提案によると、この磁場を発生させる装置に必要な磁力(磁束密度)は1〜2テスラ程度。ちなみに、山梨県で試験中のリニアモーターカーには1テスラの超電導磁石が使われているといい、磁力だけに限って言えば既存の技術で実現可能ということになる。

nasaproposes.jpg

地球化された火星のイメージ Ittiz/Wikimedia Commons

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ロシア疑惑捜査のモラー元FBI長官死去、トランプ氏

ビジネス

中国首相、フォーラムで一段の経済開放約束 日本企業

ワールド

停戦後に機雷除去で自衛隊派遣検討も、ホルムズ海峡巡

ワールド

ソフトバンクG、米オハイオ州にAIデータセンター建
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 2
    「カメラの目の前」で起きた爆発の瞬間...取材中の記者に、イスラエル機がミサイル発射(レバノン)
  • 3
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 ──「成功」が招く自国防衛の弱体化
  • 4
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 5
    スウェーデン次期女王ヴィクトリア皇太子、陸軍訓練…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    人気セレブの「問題ビデオ」拡散を受け、出演する米…
  • 8
    「胸元を強調しすぎ...」 米セレブ、「目のやり場に…
  • 9
    「筋力の正体」は筋肉ではない...ストロングマンが語…
  • 10
    BTSカムバック公演で光化門に26万人、ソウル中心部の…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 4
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 6
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 9
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 10
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中