最新記事

イギリス

スコットランド2度目の独立投票で何が起こるか

2017年3月29日(水)19時35分
ジョシュ・ロウ

イギリスから独立してEUに残留したいスコットランド行政府のスタージョン首相 Dylan Martinez-REUTERS

<ブレグジットを決めたイギリスから独立してEUに残留しようというスコットランド議会が2度目の住民投票実施を決めた。だが勝敗のカギを握るのは、EU離脱も独立も支持した強硬なナショナリストかもしれない>

英スコットランド行政府議会は28日、イギリスからの独立の是非を問う2度目の住民投票を英政府に求める動議を可決した。イギリスのテリーザ・メイ首相はEU離脱交渉と並行してスコットランドの独立問題を抱え込むことになる。行政府首相のニコラ・スタージョンは、イギリスから独立してEUに残留することを求めており、2年以内の住民投票を目指している。次は何が起こるのか?

【参考記事】また独立問う住民投票? スコットランドの複雑な本音

■2度目の住民投票でどちらが勝つか

イギリスからの独立が否決された2014年の住民投票以降、スコットランド世論に目立った変化はない。投票では独立賛成が45%だったのに対し、反対が55%だった。昨年6月にイギリスの国民投票でEU離脱が決まってからもこの傾向は変わらない。だが2014年を振り返ると、投票実施が決まった時点ではわずか30%だった独立賛成派が選挙期間中に大きく勢力を伸ばした。世論調査は絶対ではない。

2014年の住民投票で話題にすら上らなかったブレグジット(イギリスのEU離脱)はスコットランドの世論形成に重大な影響を与える可能性があるが、それが有権者の投票行動にどのような変化を及ぼすかの予測は不可能だ。

カギを握るスコットランドのナショナリスト

EU残留支持でイギリスからの独立に反対したスコットランド人は、欧州や世界とオープンなつながりをを維持したいと考えている可能性が高いだろう。だとすれば、孤立に向かうイギリスからの独立には賛成するかもしれない。

【参考記事】それで、スコットランドは独立するの?

一方、独立に賛成し、イギリスのEU離脱にも賛成したスコットランド人は、EUであれイギリスであれ、いかなる連合にもコミットしたくないという強硬なナショナリストだ。

スタージョンは、現状維持という選択肢を残さず、議論を二者択一に絞っている。「変わらないという選択肢はもうない。ただしどんな変化を望むかを選ぶ機会を提供する」と遊説先で訴えている。

だがもしスタージョンが反ブレグジット=親EU色を前面に出し過ぎると、ナショナリストに支持してもらえない恐れがある。接戦になる住民投票では、こうした少数派の票が結果を左右しかねない。

【参考記事】独立スコットランドを待つ厳しい現実

英労働党の元アドバイザー、ブレア・マクドゥーガルは、ブレグジットを支持したナショナリストのグループが今後のカギを握るとみる。「彼らにとっては、ロンドンにいる英政府のエリート集団もブリュッセルにいるEUのエリート集団も似たり寄ったりだ」。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:値上げ続きの高級ブランド、トランプ関税で

ワールド

訂正:トランプ氏、「適切な海域」に原潜2隻配備を命

ビジネス

トランプ氏、雇用統計「不正操作」と主張 労働省統計

ビジネス

労働市場巡る懸念が利下げ支持の理由、FRB高官2人
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 5
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    これはセクハラか、メンタルヘルス問題か?...米ヒー…
  • 8
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 9
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 10
    オーランド・ブルームの「血液浄化」報告が物議...マ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 7
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中