最新記事

歴史問題

安倍首相の真珠湾訪問を中国が非難――「南京が先だろう!」

2016年12月28日(水)17時50分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

安倍首相がハワイを訪問、真珠湾で演説 Kevin Lamarque-REUTERS

 安倍晋三首相の真珠湾訪問に対して、中国政府は「先に訪問すべき場所があるだろう」と非難した。その「場所」はなぜ、毛沢東他界後に建立されたのか、なぜ中国は時間をさかのぼって抗日戦争を強調するようになったのか。

非難攻撃する中国政府

 安倍首相は日本時間28日午前、ハワイにあるアリゾナ記念館を慰霊訪問した。1941年12月8日(現地時間7日)、日本海軍の機動部隊による真珠湾奇襲攻撃は太平洋戦争の発端となったが、その犠牲者を弔う記念館だ。

 ハワイに向かう前、安倍首相は「真珠湾攻撃から75年目、日本国民を代表して慰霊のために真珠湾を訪問する。戦争の惨禍は二度と繰り返してはならないという未来への誓い、和解の価値をオバマ大統領と世界に発信したい」と述べた。

 これに対して中国政府は「日本は真珠湾訪問によって第二次世界大戦の歴史を完全に清算しようとしているが、中国などアジア諸国との和解がない限り、日本は永遠に歴史の一頁をめくることはできない」として、さまざまな非難を日本に浴びせている。

 たとえば、

 ●真珠湾より先に行くべきは「南京大虐殺記念館」だろう!

 ●世界反ファシスト戦争の東方の主戦場は中国だ!

 ●日本の指導者はいつまでも歴史の真相から目をすらすべきではない。あの侵略戦争に対し真剣に反省しなければならない!

 これらの言葉は12月5日に、安倍首相が真珠湾訪問を発表してから一斉に始まっており、特に2016年12月13日に南京で開催された記念式典においても語られた。式典で演説した中共中央政治局委員で中央組織部部長でもある趙楽際氏は、つぎのような趣旨のことを述べている。

 ●中国共産党の指導の下で全民族が力を合わせて3500万人の犠牲を出しながら、8年間抗日戦争を戦った結果、偉大なる勝利を収めた。

 ●侵略戦争を覆そうとする醜悪な行動のために歴史を改ざんしようとする如何なるもくろみも、中国人民と世界の平和と正義を愛する人々から糾弾され、軽蔑されるだろう。

歴史を改ざんしているのは中国共産党

 さて、中国政府が言うところの「真珠湾訪問よりも先に訪問すべき場所」とは、中国流に言うならば「南京大虐殺記念館」であり、「北京盧溝橋抗日戦争記念館」あるいは「"九一八"歴史博物館」などである("九一八"は1931年9月18日の「満州事変」のことを指す)。

 ただ、これらは中国共産党政権である中華人民共和国(現在の中国)が誕生した1949年以降、1980年代まで、ほとんど言及されたことがなく、すべて建国から30年~50年後になって初めて建立されたものばかりである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは154円後半、米雇用統計控え上値重

ワールド

インド総合PMI、12月は58.9に低下 10カ月

ビジネス

プライベートクレジット、来年デフォルト増加の恐れ=

ワールド

豪銃撃、容疑者は「イスラム国」から影響 事件前にフ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連疾患に挑む新アプローチ
  • 4
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 8
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 7
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中