最新記事

<ワールド・ニュース・アトラス/山田敏弘>

遅刻魔プーチンの本当の「思惑」とは

2016年12月16日(金)17時00分
山田敏弘(ジャーナリスト)

Sputnik-Michael Klimentyev-REUTERS

<外国の首脳らとの会談に、プーチンはどうやらわざと遅刻しているようだ。ロシアでは、そのことで交渉を優位に進められると考えられている>(写真:予定よりも約3時間遅れて山口に到着したプーチンは、出迎えの岸田外相と余裕の笑みで握手を交わした)

 ロシアのプーチン大統領が今週15日から日本を訪問している。

 プーチンは最初の訪問地である山口県へ、予定より遅れて到着した。会談場所となった長門市の温泉旅館には、約3時間も遅れて入った。

 ロシア側は、ちょうどシリアで政府軍が反体制派の拠点アレッポを制圧した「シリア情勢」に対応するために、到着が遅れたと言い訳したが、実はプーチンが遅刻するのはよくあることだ。そしてプーチンは、わざと遅刻している可能性がある。

 そもそも12月に岸田外相がロシアの首都モスクワを訪問した際にも、プーチンは岸田外相を2時間も待たせている。ただこれは相手が誰だから、ということではないようだ。

【参考記事】プーチン年次教書「世界の中心で影響力」を発揮する

 2015年にはバチカンで、ローマ法王との会談に1時間遅れて登場した。実は2013年にローマ法王と会った際にも、50分遅刻している。2003年にイギリスのエリザベス女王は14分待たされ、ウクライナのヤヌコビッチ元大統領は4時間も待たされた。2012年にはドイツのメルケル首相との会談に約4時間遅れ、2014年にも夕食会の途中に姿を見せてメルケルを怒らせたこともある。

 一方で待つのは嫌いなようで、2016年8月にトルコのエルドアン大統領がプーチンとの会談に遅刻したときには、プーチンは怒りを隠さなかったと報じられている。

 英メディアは、ロシア政府を取材している記者の話から、会談が数時間遅れて始まるのは当たり前で、「プーチンにしてみれば、1時間の遅刻なら、それは尊敬の念の表れだ」と伝えている。ちなみに、プーチンの元妻は、結婚以前のデートにもプーチンは遅刻していたと暴露した。

 専門家からは、プーチンが相手より優位に立とうとする目的で会談に遅刻しているという指摘が出ている。そして、どうもこの「戦略」はプーチンに限ったことではないようだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

テスラ、6月の英販売台数は前年比12%増=調査

ワールド

豪家計支出、5月は前月比+0.9% 消費回復

ワールド

常に必要な連絡体制を保持し協議進める=参院選中の日

ワールド

中国、太平洋島しょ地域で基地建設望まず 在フィジー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 7
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 8
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 9
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 10
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギ…
  • 5
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 6
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 10
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 7
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中