最新記事

ミャンマー

スー・チーにも見捨てられた?ミャンマーのロヒンギャ族

2016年12月7日(水)17時50分
コナー・ギャフィー

ミャンマー大使館前でロヒンギャ弾圧に抗議するデモ(11月25日、ジャカルタ)Darren Whiteside-REUTERS

<少数民族ロヒンギャ族に対するミャンマーの民族浄化は止まず、10月以降2万1000人がバングラデシュに逃れた。ミャンマー国家顧問でノーベル平和賞受賞者のアウン・サン・スー・チーも救援に動く気配はない>

 国際移住機関(IMO)はこのほど、ミャンマーに住むイスラム教少数民族ロヒンギャのうちおよそ2万1000人が、ここ2カ月ほどの間に迫害を怖れて隣国バングラデシュに脱出しと発表した。 

 バングラデシュ南東部の都市コックスバザールにあるIMO事務所のサンジュッタ・サハニー所長は12月6日、ロヒンギャ族は仮設シェルターや公式の難民キャンプに避難していると述べた。

 サハニー所長がAFPに話したところによれば、10月9日から12月2日にかけて、2万人を超えるロヒンギャ族がコックスバザールに到着したという。

 ロヒンギャ族は、ミャンマーのイスラム教少数民族であり、その総数は100万人を超える。ミャンマーでは一般的にバングラデシュからやってきた不法移住者だとみなされており、事実上無国籍だ。選挙権はなく、子どもが生まれても出生証明書は発行されない。バングラデシュと国境を接するミャンマー南東部ラカイン州にまとまって暮らしている。

【参考記事】ミャンマー政府の主導で進むロヒンギャ絶滅作戦

 ミャンマーの事実上の最高指導者であり、ノーベル平和賞受賞者でもあるアウン・サン・スー・チーに対し、同国内で迫害を受けているロヒンギャ族を窮状から救うようアメリカ政府は呼びかけてきたが、スー・チーはこの問題に関する態度を留保したままだ。

【参考記事】存在さえ否定されたロヒンギャの迫害をスー・チーはなぜ黙って見ているのか

バングラデシュでも門前払い

 バングラデシュ政府は国境警備を強化しているほか、沿岸警備艇を配置して、ロヒンギャ族の避難民で満載の船を追い返している。ミャンマー軍がラカイン州に住むロヒンギャ族に対して弾圧を始めて以来、バングラデシュ側が追い返した船の数は数百隻にも上っている。

【参考記事】悪名高き軍がミャンマーで復活

 この弾圧は今年10月、ロヒンギャとされる武装集団による攻撃を鎮圧する目的で始まったものだ(この攻撃では、国境を警備する警察官9名が殺害された)。国連高官はBBCに対し、ミャンマーはロヒンギャ族の民族浄化を進めていると述べた。人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチが衛星画像を分析したところ、ラカイン州北部では1250を超える建造物が破壊されていることが明らかになった。原因はほとんどが放火だ。

 ミャンマー政府は、ロヒンギャ族を迫害しているという疑惑を否定している。

 バングラデシュの首都ダッカでは12月6日、ロヒンギャ族迫害に抗議するイスラム教徒たちが、ミャンマー大使館前を目指す数千人規模のデモ行進を行ったが、バングラデシュ警察はこれを阻止した。ダッカ警察のシブリー・ノマン副本部長はAFPの取材に対し、参加者は1万人ほどだったが、「平和的な姿勢」だったと話している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米経常赤字、25年第3四半期2264億ドルに縮小 

ビジネス

インフレ緩和なら追加利下げの可能性=フィラデルフィ

ビジネス

規制緩和がインフレ押し下げへ、利下げを正当化=ミラ

ワールド

米最高裁、トランプ関税の合憲性判断示さず 次回判決
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広がる波紋、その「衝撃の価格」とは?
  • 2
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 5
    飛行機内で「マナー最悪」の乗客を撮影...SNS投稿が…
  • 6
    鉛筆やフォークを持てない、1人でトイレにも行けない…
  • 7
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 8
    宇宙に満ちる謎の物質、ダークマター...その正体のカ…
  • 9
    年始早々軍事介入を行ったトランプ...強硬な外交で支…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 5
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 6
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 9
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中