最新記事

詐欺

米国で被害拡大、インド発「振り込め詐欺」の手口

2016年12月5日(月)15時27分

 高齢者や騙されやすい人々につけ込むこの作戦について、コールセンターの指導員により研修目的で作成されたとみられる研修教材と録音された会話が、ある程度の手掛りになると捜査官は考えている。

<「厳しく接するよう教えられた」>

 「稼ぎは読めなかった。良い日もあったし、ダメな日もあった」。 ある偽装コールセンターの運営を管理していたというHaider Ali Ayub Mansuriは、裁判所による拘留期間延長でインドの刑務所に戻された先週、ロイターに語った。インド警察が逮捕した75人の1人だ。

 「好調な日には、たった1人のアメリカ人から2万ドルも引き出したことがある」と彼は言う。

 インドでは、この詐欺作戦の規模の大きさに多くの人々が驚いた。

 ターネーにある複数のコールセンターでは数カ月にわたり、数百名の若い男女が夜間働いていた。通話担当者は内国歳入庁の職員をかたり、おもに新来の移民や高齢者などを狙って脅し、ギフトカードを購入させてコードを転用するなどの電子的方法によって虚偽の追徴税を払わせていた、とインド側の捜査官は説明する。

 「何千人もの市民に録音したメッセージを送信し、折り返し電話するよう求める。相手が電話してきたら、こういうコールセンターで対応する」とターネー警察のマネーレ副署長は説明する。

 内部告発を受けた警察は10月初旬、コールセンター従業員の勤務時間帯に、施設の強制捜索を行った。関連ビルには7カ所のコールセンターが設けられており、数日間で700人以上が拘束された。大半はその後釈放されたが、市内から出ることを禁じられている。

 電話では、被害者に対し、逮捕や投獄、家屋の差押え、パスポート押収などの脅しをかけていた。

 払う金がないと「高齢の女性が泣き出してしまったことがあった」と元コールセンター従業員は語る。「だが金を要求し続けた。厳しく接するように教えられていた」と彼はロイターに語った。

 ムンバイの北500キロにあるアフマダーバードで追加の強制捜索を行った警察は、マネーレ副署長に言わせれば「これらのコールセンターの中枢神経」と考えられるものを発見。「巨額の金が取引されていた。(詐欺は)ここ数年続いていたと見られる」

 警察による強制捜索は、記録という意味では、若干の研修用資料を除きほとんど収穫がなかった。ペンや携帯電話の持ち込みをコールセンターのマネジャーが禁じていたからではないか、と別の元従業員は推測する。

 ロイターはコールセンター従業員の説明を独自に確認することはできなかった。

<毎週のインセンティブ>

 経済学部の卒業生だという別の元従業員は、センターが何をやっているのか知らずに就職したという。月給1万2000ルピー(約2万円)は大卒者の標準からすればかなり低いが、それでも仕事は仕事であり「今は就職難だから」と彼女は語った。

 最初の1週間はフロアマネジャーが付き添う研修だったという。通話担当者が被害者に電話をしているあいだ、何十人もの研修生は部屋の一角で肩を寄せ合い、通話に使う問答集を暗記しなければならなかった。

 別の元通話担当者は「手っ取り早く稼げた」と語る。捜査官が確認したコメントによれば、この元従業員は「1ドル入金されるたびに2ルピー(約3円)もらえた」と話している。

 従業員たちはうさんくさい仕事を続けるよりも、辞めたがっていたが、マネジャーが毎週、目標達成した従業員に現金やちょっとした商品などの報奨をくれるので、続けていたという。

(Rajendra Jadhav記者, Euan Rocha記者、Rahul Bhatia記者、翻訳:エァクレーレン)



[ムンバイ 30日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イラン最高指導者が米非難、イスラエル支援継続なら協

ビジネス

次回FOMCまで指標注視、先週の利下げ支持=米SF

ビジネス

追加利下げ急がず、インフレ高止まり=米シカゴ連銀総

ビジネス

ECBの金融政策修正に慎重姿勢、スロバキア中銀総裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつかない現象を軍も警戒
  • 3
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った「意外な姿」に大きな注目、なぜこんな格好を?
  • 4
    「あなたが着ている制服を...」 乗客が客室乗務員に…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 9
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 10
    【HTV-X】7つのキーワードで知る、日本製新型宇宙ス…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 9
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中