最新記事

米政治

ゴルフ場に墓石を使うトランプは中国と似ている

2016年11月25日(金)18時48分
譚璐美(作家、慶應義塾大学文学部訪問教授)

David Moir-REUTERS

<もしもヒラリーが大統領選で勝利していたら、中国にとっては「傲慢不遜な相手」だったかもしれない。一方、トランプと中国には思考方法で共通するところもあり、中国にとって「与しやすい相手」だろう> (写真:2010年撮影)

 振り返れば、今回、アメリカで見た大統領選挙の模様はすさまじかった。11月8日午後8時(アメリカ東部時間)に始まったテレビ各局の開票速報は、時間とともに熱を帯び、刻一刻と移り変わる熾烈な戦いを午前3時まで報道しつづけた。

 結果はご存知のとおり、アメリカだけでなく世界中の大方の予想を覆して、ドナルド・トランプ候補がヒラリー・クリントン候補を制して、次期アメリカ大統領に確定した。その瞬間、信じられない現実に呆然とする人、驚愕に満ちた眼差しを向ける人がいる一方で、熱狂する人波に囲まれて勝利宣言をするトランプ候補自身、心なしか不安そうな表情を浮かべていたのが印象的だった。

 だが、ニューヨークの金融界の専門家たちは、かなりのところ、この結果を予想していたようだ。

 ウォール街で長年金融に携わってきた人々の間には、ヒラリー・クリントンと直に接した経験から、彼女の強引な手腕に悩まされ、金に執着心の強い性格に辟易していた金融マンが少なくなかったらしい。ヒラリー候補の「メール問題」では、ウォール街から多額の裏金を巻き上げていたという疑惑がもたれたが、ウォール街ではもはや既成事実であり、「あいつほど金に汚い政治家はいない!」と、公然と口にして憚らない人もいたほどだ。選挙戦の終盤になって「メール問題」が再浮上し、ヒラリー候補の支持率を押し下げた背景には、共和党による水面下の工作だけに止まらず、複合的な作用が働いていたのではないだろうか。

【参考記事】元大手銀行重役「それでも私はトランプに投票する」

 熾烈だったアメリカ大統領選挙の様子を、中国はどう見ていたのだろうか。

 ヒラリー・クリントンが初めて中国を訪問したのは1995年9月、第4回「世界女性会議(World Conference on Women)」に出席するため、クリントン大統領夫人としての「ファースト・レディ外交」だった。中国は彼女を歓迎し、厚遇した。次いで1998年、クリントン大統領夫妻はアメリカ企業の代表1000人以上を引き連れて訪問し、中国各地を巡って米中ビジネスの音頭取りを行い、中国側の協力の下で無数の契約を成立させた。

 それ以来、クリントン一家の中国びいきは衆目の知るところとなった。アメリカの一部報道で、1997年に「クリントン大統領が中国から賄賂をもらった」と報じられたとき、私は香港取材中で、たまたま出会った香港財界の有力者のひとりに真偽を確かめてみた。

「ああ、あれはクリントン大統領の誕生日パーティーに招かれたので、お祝いのためにプレゼントしただけだよ!」

 ことも無げに口にするその財界人の横顔には、中国経済を支える香港の財界人としての自信と余裕が漂っていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

GMメキシコ工場で生産を数週間停止、人気のピックア

ビジネス

米財政収支、6月は270億ドルの黒字 関税収入は過

ワールド

ロシア外相が北朝鮮訪問、13日に外相会談

ビジネス

アングル:スイスの高級腕時計店も苦境、トランプ関税
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「裏庭」で叶えた両親、「圧巻の出来栄え」にSNSでは称賛の声
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 5
    セーターから自動車まで「すべての業界」に影響? 日…
  • 6
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 7
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 8
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 9
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 10
    日本人は本当に「無宗教」なのか?...「灯台下暗し」…
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 6
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 7
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中