最新記事

昭和の食生活

高野豆腐......凍り豆腐(高野豆腐)は植物性タンパク質の王様

2016年11月17日(木)15時20分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

y-studio-iStock.

<最も体にいいのは「昭和の食生活」。しかも、安くて美味く、調理も簡単だ。和食を知り尽くした食文化史研究家の永山久夫氏(85歳)が、自らの若く貧しい時代を支えた「食の知恵」を初公開。彼が薦める食材の1つが、高野豆腐だ>

 東北大学大学院農学研究科の都筑穀准教授の研究によると、昭和50(1975)年ごろ、日本の一般家庭で採られていた食事が最も健康的だという。あらゆる種類のダイエット法が登場しては消えていく中で、この研究は話題となった。「やはり和食が一番」という通説を裏付けるものでもあった。

【参考記事】NY著名フレンチシェフが休業、日本に和食を学びに来る!

 そんな「昭和の食生活」を自ら実践してきたのが、食文化史研究家の永山久夫氏だ。昭和7(1932)年、福島県生まれ。漫画家を目指して上京し、結婚、一児を授かるが、妻が病死。以来、貧乏暮らしをしながら仕事と子育てを続けた。昭和50年に『納豆沿革史』を上梓した永山氏は、以後、食文化史研究家として活躍するようになる。

 現在85歳、和食を知り尽くした永山氏が、自らの貧しかった時代を支えた「食の知恵」を初公開したのが新刊『ひと月1万円!体にやさしい 昭和のシンプル食生活』だ。当時の食生活を振り返るエッセイを織り交ぜながら、基本食材と121のレシピを紹介している。

 ここでは本書から一部を抜粋し、5回に分けて掲載する。第2回は「2章 永山久夫が食べてきた昭和のシンプル食材10」より。


『ひと月1万円!体にやさしい
 昭和のシンプル食生活』
 永山久夫 著
 CCCメディアハウス

※シリーズ第1回:ご飯を最後に食べる「会席料理式ダイエット」のすすめ

◇ ◇ ◇

⑥高野豆腐......凍り豆腐(高野豆腐)は植物性タンパク質の王様

 高野豆腐はエライ! なぜなら、大豆食品、そして植物性タンパク質の王様なのですから。

 考案した高野山のお坊さまたちに感謝して食べなければ、仏罰が下ります。

 日本人が作り出した、大豆食品の中で最も栄養価の高い保存食。古来、多くの日本人に良質な植物性タンパク質を与え続けてくれました。

 大豆は「畑の不老長寿食」といってもよく、さまざまに利用・加工されてきました。中でも高野豆腐は、別名「凍り豆腐」というぐらい、冬の厳冬期に太陽に当て、北風にさらすことによって栄養がぎゅっと凝縮された、大豆食品のナンバーワン。

 本体の一割は、アミノ酸バランスのいいタンパク質なのです。しかも、ハッピネス・ホルモンと呼ばれるセロトニンの原料となるトリプトファンの含有量がきわめて多い。

 セロトニンが増えると心がリラックスし、免疫力も上がり、病気に対する抵抗力も強くなります。

 昔から、「怒るな、転ぶな、風邪ひくな」といわれてきました。これは、一日を平穏に過ごすための三つの知恵。中高年になってからの「心身」の健康を保つための、先人の教訓といっていいでしょう。

 人間はカルシウムが不足するとイライラしたり、怒りっぽくなり、血管や脳、心臓などにダメージを与えかねません。ところがすばらしいことに、高野豆腐にはカルシウムも多く、100グラム中に660ミリグラム。さらには、老化の原因となる活性酸素を減らすビタミンEも多く、肌の老化を防いでくれます。

 他人と自分を比べず、しっかり足元を見すえて、毎日しっかり生きること。そのためにも、安くて栄養豊富な高野豆腐を食べてください。日々、高野山のお坊さまに感謝しながら暮らしましょう。

 そういえば、毎日3食、副菜で高野豆腐を食べている内科のお医者さんがいます。良質のタンパク質がとれるということで、高野豆腐の煮物を作り置きしているそうです。

※シリーズ第3回:1日おきに魚と肉......栄養のかたよりを防ぐ永山流食事法

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪、35年の温室効果ガス排出目標設定 05年比62

ワールド

CDC前所長、ケネディ長官がワクチン接種変更の検証

ビジネス

TikTok合意、米共和党議員が「中国の影響継続」

ワールド

中国国防相、「弱肉強食」による分断回避へ世界的な結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中