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中国「未完の橋」が示す北朝鮮との蜜月の終わり

2016年9月15日(木)10時50分


豊富な資源

 中朝境界地域の「黄金坪・威化島経済地帯」は、北朝鮮北東端の国境都市・羅先とともに、当局の手厚い支援を受けてきた。同国の故金正日総書記は2010年の中国訪問時に、こうした中朝国境地帯の経済開発の協定を結んでいる。

 中国が建設した道路が市街地に通じ、国境を結ぶ新たな橋も建築中の羅先地区は開発がさらに進んでおり、より成功を収めている。

 一方、若き指導者の金正恩氏は、いまだ中国訪問を果たしていない。核とミサイル実験計画を加速し、他国が危機感を募らせるなか、正恩氏が近く中国に招待される公算は低いだろう。

 2012年に作成された豪華な宣伝パンフレットには、黄金坪に輝く高層ビルと広い並木道を芸術家が描いた完成予想図を掲載していた。

「北朝鮮は、豊富で質の高い人的資源だけでなく、豊かな資本と広大な開発用地を有している」。英語と中国語で書かれたパンフレットにはそう記され、投資家に対する法的保護や減税を約束していた。

 ロイターが今週訪れた現地には、農地と有刺鉄線の張ったフェンスが中国側から見えるだけだった。

「政府は、中朝間の貿易によって、この地区の経済成長を図ろうとしていたが、それは実現しなかった」。Liuと名乗る警備員は「商業通り」と楽観的に名付けられた通り沿いのオフィスビル前でそう語る。「正直なところ、新地区が発展していない主な理由は、橋が開通していないからだ」

戦争の絆

 新たな橋には、丹東にある「中朝友誼橋」を補完する目的があった。この古い橋には単線の鉄道線路と平行して、車両と人の双方が通行する一車線が走っているだけだ。

 二か国間貿易の約4分の3が丹東を経由しており、それは今も限定的だ。今年1月から7月における、中国の対北朝鮮貿易は、わずか177億元にとどまり、対韓国貿易の9080億元を大きく下回っている。

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