最新記事

北朝鮮

中国「未完の橋」が示す北朝鮮との蜜月の終わり

2016年9月15日(木)10時50分

9月11日、濁水の上にそびえ立つ新鴨緑江大橋は、本来、中国と北朝鮮が共同運営する画期的な自由貿易区への投資を促し、両国の関係の新たな時代を象徴するはずだった。写真は中国の丹東市と北朝鮮の新義州市をつなぐ予定の新鴨緑江大橋。11日撮影(2016年 ロイター/Thomas Peter)

 濁水の上にそびえ立つ新鴨緑江大橋は、本来、中国と北朝鮮が共同運営する画期的な自由貿易区への投資を促し、両国の関係の新たな時代を象徴するはずだった。

 中央分離帯のある道路が通る同橋は昨年、22億人民元(約335億円)をかけて一部完成したが、現在は放置されたままだ。中国側の国境検問所も見捨てられ、施錠されており、誰一人いない。

 未完成の橋は、北朝鮮側で突然行き止まりになっており、インフラ工事が行われている兆候はない。

 中国の国境都市・丹東に近い自由貿易区計画は2012年、北京の五つ星ホテルで鳴り物入りで発表された。かつての同盟国、北朝鮮をうまく説得して、武力による威嚇や核実験ではなく、慎重な輸出主導の経済改革を実施させようとする中国の努力の一環だった。

 北朝鮮が先週、通算5回目で過去最大となる核実験を実施したことに対する中国の怒りは、この橋が近く開通する見込みがないことを意味する。北朝鮮がすでに、中国がその継続を支持した国連による広範囲な制裁下にあるだけになおさらだ。

 丹東新地区の人気のない道路は、北朝鮮への関与策が失敗したことの証左となる。「シンガポールシティー」といった、しゃれた名前を持つ共同住宅は、むき出しだったり、未完成のままだったりする。ショッピングモールも閑散、もしくは空きが目立っていた。

 モールにある照明ショップで店番をしていたSun Lixiaさんは、「橋の北朝鮮側が開通していない。私たちには、どうすることもできない。それは、この地元経済に悪影響を与えている。北朝鮮がいつ開通するか誰も分からない」と語る。

「住宅はなかなか売れず、多くの人々がここに引っ越ししたがらない」とSunさんは言う。「ここにはきちんとした病院さえない。半分完成しただけだ」

これは2012年、丹東のある地元当局者が国営メディアに語った内容と大きく異なっている。それは、この開発は香港最大の商業地区である銅鑼湾(コーズウェイベイ)に似て、1日当たり5万人と車両2万台が橋を経由して北朝鮮に向かうとの内容だった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

次期米大統領専用機、納入再び遅延 当初予定から4年

ワールド

米南方軍司令官が退任、「麻薬密輸船」攻撃巡りヘグセ

ビジネス

日経平均は反落で寄り付く、米ハイテク株安を嫌気 5

ワールド

NATO事務総長の戦争準備発言は「無責任」、ロシア
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中