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内戦下アレッポで住民200万人の水道網がストップ

2016年8月10日(水)17時00分
ルーシー・ウェストコット

Ammar Abdullah-REUTERS

<「子供たちの命が危ない」とユニセフが声明。シリア政府軍に包囲されて戦闘が続く北部の都市アレッポで、送電施設が破壊されて水道水の供給が断たれた。病院への空爆も続いている>(写真は拠点に集結するアレッポの反体制派メンバー)

 シリア北部の都市アレッポは、シリア政府軍に包囲され、政府軍とロシア軍による空爆が続いている。これに反体制派の武装勢力が抵抗して、激しい戦闘で市民生活は壊滅的な状況にある。200万人の住民への水道水への供給が止まり、人道危機はますます進行している。

 9日にユニセフ(国連児童基金)が発表した声明によると、この戦闘によってアレッポ全域での水道水供給に必要な電力網が破壊された。アレッポ西部と東部の水道網に送電する施設が破壊されたのは先月31日。今月4日には、行政当局が別の送電線をつないで水道を復旧させたが、24時間もしないうちにそれも破壊され、再び水道水の供給が止まっている。

【参考記事】シリア反体制派の拠点アレッポに迫る人道危機

「アレッポの家族、子供たちは悲惨な状況に追い込まれている。熱波のさなかに水道が止まり、子供たちが不衛生な飲料水で感染症にかかる危険が高まっている」と、ユニセフのシリア事務所代表ハナア・シンガーは声明で訴えた。「戦闘終結まで衛生的な水道水の復旧を待つ余裕はない。子供たちの命が危険に晒されている」

 声明と同じ日、国連のシリア担当特使スタッファン・デミストゥラと緊急援助調整官のスティーブン・オブライエンが、国連安保理にアレッポの現状を報告することになっていた。NGOのシリア人権監視団によると、先週末に反体制派がアレッポ東部で2週間続いていた政府軍による包囲網を突破し、西部の友軍へとつながるルートを確保している。

30万人が不衛生な井戸水に頼る

 アレッポで水道水供給が止まってから4日が経過した。ユニセフはアレッポ西部で、1日に約32万5000人分の緊急の飲料水をトラックで運び込んでいる。だが東部では、最大30万人の住民(その3分の1は子ども)が、衛生的とは言えない井戸からの飲み水に頼っている。ユニセフは現在、アレッポ東部への援助はできていない。

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