最新記事

テクノロジー

いまさら激化する海底ケーブル競争

2016年6月13日(月)16時00分
グラント・バーニンガム

Jens Kohler-Ullstein Bild/GETTY IMAGES

<クラウドやSNSを支える欧米間の情報インフラとして需要が高まる海底ケーブル。グーグル、アマゾンに加えて、フェイスブックとマイクロソフトもケーブル敷設のプロジェクトに参入した>

 いまさら、アメリカと欧州をつなぐ通信システム用に海底ケーブルを敷設する――Wi−Fi接続や衛星通信が普及し、携帯電話の中継塔が林立する時代に違和感を覚えるかもしれない。だが、海底ケーブルの通信容量は逼迫しており、米IT企業による敷設ラッシュが続く。

 既にグーグルやアマゾンが海底ケーブル敷設プロジェクトに着手しているが、フェイスブックとマイクロソフトも先週、共同で競争に名乗りを上げた。米バージニア州から大西洋を横断し、スペイン北部の都市ビルバオに至る海底ケーブルの敷設計画だ。利用者の増加で情報量が拡大する一方のクラウドやソーシャルネットワークサービスを支えるための、通信インフラとして期待されている。

 全長6600キロ。スペイン語で潮流を意味する「マレア」と命名され、完工予定は来年10月。伝送能力は秒速160テラビット、1秒でDVD16万枚分の通信容量で、大西洋横断海底ケーブルとして現時点で最高の能力を持つ。

【参考記事】Windows10の自動更新プログラム、アフリカのNGOを危険にさらす

 無線通信の全盛時代ではあるが、衛星通信や携帯電話用のインフラ投資よりも海底ケーブルははるかに安価な通信インフラだ。南極を除く地球上のすべての大陸をつなぐため、世界中の海の底に張り巡らされてきた。

 ただし敷設工事は容易ではない。船舶が下ろすいかりで傷つけられたり、サメにかじられることもある。対策として、ケーブル自体を海底の砂に埋める例が多いという。

「できるだけ平坦な海底を選び、沈没船のような障害物を慎重に避ける」と敷設工事を得意とするNECのシステムエンジニア、エリカ・コガは言う。

 海底ケーブルが初めて敷設されたのは1858年のこと。銅線仕様で用途は電信だった。それから150年以上を経て、今や冷蔵庫とスマホが交信するご時世に。絶え間なく迅速なサービスを提供するため、海の底を通る「黒子」のニーズは高まる一方だ。

[2016年6月 7日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏、米陸軍長官と和平案を協議 「共に取

ビジネス

12月FOMCでの利下げ見送り観測高まる、モルガン

ワールド

トランプ氏、チェイニー元副大統領の追悼式に招待され

ビジネス

クックFRB理事、資産価格急落リスクを指摘 連鎖悪
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中