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英EU離脱

英EU離脱に憤る若者たち: でも実は若年層は投票しなかった世代

2016年6月27日(月)16時10分
ブレイディみかこ

Kevin Coombs-REUTERS

<英EU離脱の結果に、75%は残留票を投じたという若年層は怒りをあらわにしている。しかし、若年層が投票の鍵を握ると言われていたが、今回も若者の投票率は低かった...>

若年層は怒りを露わにしていてる

 ワーキングクラスの怒りがまさかの英国EU離脱を生んだ。栗原康さんの著書「村に火をつけ、白痴になれ」が日本で大評判だそうだが、英国の労働者たちはEU村に火をつけてしまったのである。

 が、75%は残留層を投じたという若年層は怒りを露わにしていて、6月24日もBBC2の「ニュース・ナイト」という番組を見ていると、若いライターでEU残留派のパリス・リーズが、初老の歴史学者で離脱派のデヴィッド・スターキーに向かって憎悪をむきだしにしていた。


「はっきり言ってお年寄りの世代は、私たちのように長く生きない。若い世代はもう飽き飽きしているんですよ。私たちの世代は授業料を払わなければいけません。あなたたちは払う必要なかったですよね。私たちはすべてを取り上げられている」

 ツイッターにはこんなつぶやきも投稿されていた。


「無料の教育や潤沢な年金、社会流動性、そのすべてを与えられていた世代。その彼らが私たちの世代から未来を取り上げてしまった」

 また、チャンネル4の名物ニュースキャスターだったジョン・スノウが、「今朝、パン屋で高校生2人が僕に泣きながら『離脱に投票した年寄りたちは自分たちに何ということをしてくれたんだ』と言った」とつぶやき、「17歳やそこらの『エキスパート』に何がわかるの」「心から共感する」「私の父は80代ですが残留に入れました。高齢者が全員バカでわがままじゃないですよ」など、多くのツイートが殺到して大騒ぎになった。

責任は私たち、若年層自身にある

 こうした若者たちの怒りを記事にしているのがガーディアンの若手コラムニスト、リアナン・ルーシー・コスレットだ。が、彼女は、今回の大きな失望から若年層が学まねばならないことがあったと結論する。


 遅すぎたとは言え、私の世代が学んだ教訓がある。政治を冷笑して、関わろうとせず、自分たちのために何もしてくれないシステムに参加しても意味がないと感じているとどうなるかということだ。
 私たちの多くは投票に行かないし、有権者登録さえしない。そうすると政治家は私たちのことなど考えもせず政策を作る。(中略)落ち込むことには、あれだけ若年層が投票の鍵を握ると言われてたのに、今回も若者の投票率は低かったと予測されていることだ。まだ数字は正式に発表されていないが、このことについては、責任は私たち自身にある。

出典:Guardian:"If you're young and angry about the EU referendum, you're right to be" by Rhiannon Lucy Cosslett

 BBCが発表した投票結果の各種分析チャートのページでも、18歳から24歳までの人口が多い地域では投票率が低かったことが指摘されている。

 昨年、ジェレミー・コービンが若者たちを熱狂させて労働党党首に選ばれ、若者たちが再び政治的になったと言われていたが、それはロンドンなど大都市の大学生や大卒の若者たち中心の動きで、全国的に見れば今回のような重要な投票でさえ行ってない若者たちがけっこういたということになる。有権者登録締め切り前の6月初めの時点で、18歳から24歳の層の30%が有権者登録していないことが明らかになっていたが、65歳以上で登録していないのはわずか5%だった。オーウェン・ジョーンズはこう書いている。


 英国の約半数である残留に投じた人々は、怖れや怒りを他の市民にぶつけたくなるだろう。だが、それはことを悪化させるだけだ。離脱派の多くは、すでにのけ者にされ、無視され、嫌われてきたと感じている。現在ソーシャルメディアに現れているような離脱派の人々への侮蔑、いや、上から目線のスノッブな言葉を彼らのコミュニティーが感じたからこそ、今回の結果がある。(中略)もし英国の左派に未来があるとすれば、それはワーキングクラスの人々の生活やコミュニティーとの文化的・政治的な乖離を直視しなければならない。

出典:Guardian: "Grieve now if you must - but prepare for the great challenges ahead" by Owen Jones

中高年の労働者層の多くは離脱票を投じた

 そして若年の労働者層の多くが投票に行かず、そのことが残留派の敗北の理由の一つだったとすれば、英国の左派は全年齢層でワーキングクラスとの親和性が薄いものになったのかもしれない。

 オーウェン・ジョーンズは「Chavs」という著書で、英国の労働者階級が「チャヴ」という言葉でシステマティックに悪魔化され、侮蔑と差別の対象となってきた事実を「ソーシャル・レイシズム」と呼んで批判していた。EU離脱投票で爆発した労働者階級の怒りを左派やリベラルは「醜い」と一蹴して嘆くが、その醜さを生み出した背景には「Chavs」で描かれた英国の社会状況が横たわっている。


[執筆者]
ブレイディみかこ
在英保育士、ライター。1965年、福岡県福岡市生まれ。1996年から英国ブライトン在住。2016年6月22日『ヨーロッパ・コーリング 地べたからのポリティカル・レポート』(岩波書店)発売。ほか、著書に『アナキズム・イン・ザ・UK - 壊れた英国とパンク保育士奮闘記』、『ザ・レフト─UK左翼セレブ列伝 』(ともにPヴァイン)。The Brady Blogの筆者。

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