最新記事

インタビュー

【再録】タランティーノvs.本誌「辛口」映画担当の舌戦

2003.10.22

日本の時代劇などへのオマージュに満ちた『キル・ビル Vol. 1』の公開時、本誌の映画担当記者がぶつけた率直な意見にタランティーノは……

2016年3月29日(火)16時20分

鬼才、吠える 94年の『パルプ・フィクション』や97年の『ジャッキー・ブラウン』で高く評価されたクエンティン・タランティーノは、お得意の暴力描写とマニアックな映画への愛に満ちた『キル・ビル Vol. 1』を発表。辛口で知られたデービッド・アンセンに対して、「ご説ごもっとも」「はい、はい。そうですかい」「そんなことはまったくない」などと反撃した(2007年撮影) Eric Gaillard-REUTERS


ニューズウィーク日本版 創刊30周年 ウェブ特別企画
1986年に創刊した「ニューズウィーク日本版」はこれまで、政治、経済から映画、アート、スポーツまで、さまざまな人物に話を聞いてきました。このたび創刊30周年の特別企画として、過去に掲載したインタビュー記事の中から厳選した8本を再録します(貴重な取材を勝ち取った記者の回顧録もいくつか掲載)。 ※記事中の肩書はすべて当時のもの。

[インタビューの初出:2003年10月22日号]

 夫やおなかの子を殺された花嫁のザ・ブライド(ユマ・サーマン)が、たった一人で復讐に乗り出す――お得意の暴力描写とマニアックな映画(とくに日本の時代劇)へのオマージュに満ちた『キル・ビル』は、クエンティン・タランティーノの久々の監督作品だった。2部作品となった『キル・ビル』の第1部公開時に、本誌映画担当デービッド・アンセンが率直な意見をぶつけた。

◇ ◇ ◇

――では、まず映画の冒頭から。オープニングで「クエンティン・タランティーノ監督第4作」という文字が映し出される。こういうことは過去に例がないのでは?

 だろうね。

――あれは笑えたけど、心配にもなった。監督が自分を神格化しているような感じがしてしまう。

(笑いながら)そうかもね。

<参考記事>【再録】J・K・ローリング「ハリー・ポッター」を本音で語る

――でも、映画そのものはとてもよかった。いろいろな映画のスタイルを取り入れている。

(撮影監督の)ボブ・リチャードソンには、「10分ごとに別々の映画みたいにしてくれ」と言っておいた。ある場面は往年のマカロニウエスタン風、別の場面は『座頭市』のような時代劇風、また別の場面はカンフー映画風、という具合にしたかったんだ。

 映画に統一感をもたせるために一つのスタイルで貫くという必要性は感じなかった。

――「おいしいところ取り」をねらったということ?

 そう、そう、そうなんだ。それは、僕の映画作りの哲学と言ってもいい。くだらないクズは切り捨てて、いいところだけ拾えばいい。何百万回も見せられたようなゴミはもういらない。

――といっても、その「いいところ」も、見覚えのあるものの再利用であることに変わりはない。

 はい、はい、おっしゃるとおりです。でも、リサイクルするときにひねりを加えている。僕の視点で撮る以上、必然的に他に二つとないものになる。

――暴力表現に話題を移そう。私はこの映画の暴力描写を不快に感じていない。様式美が追求されているからだ。とはいえ、作品の中では大量の血が飛び散る。吹き出す血潮がモチーフと言ってもいい。

 日本映画の伝統なんだ。日本人は、園芸用のホースみたいな太い血管をもってるんだ(笑)。

――いちばんすさまじいと思ったのは、病院の場面。見ていて、思わず座席から跳び上がりそうになった。意識を取り戻したザ・ブライドが、それまで看護師が男たちから金を取って植物状態の彼女とセックスをさせていたと知り、看護師の頭を繰り返し鉄の扉にガンガン打ちつける。

 このほうが、人の腕を切り落とすよりバイオレントだからね。現実味があるぶん怖い。

 いつも言っていることだけど、映画の中で誰かの首が切り落とされても、僕はぞっとしない。紙の端で指先を切って血が出るシーンのほうがよっぽど怖い。

――この病院の暴力シーンは『パルプ・フィクション』でサディストが登場人物をいたぶる場面を連想させる。

 確か、あなたはあの場面が気に食わないと言っていたね。「本当の悪を描こうとしたこの場面だけは、薄っぺらで月並みな描写になってしまっている」というような文章で酷評していた。

――私よりよく覚えている。

(笑いながら)ああ、そういうタチなもんでね。

<参考記事>【再録】マイケル・ジョーダンの思春期、ビジネス、音楽趣味......

――アクションシーンの話をしよう。この作品には、いくつか素晴らしいアクションシーンがある。終盤で、ユマ・サーマンが片っ端から敵をなぎ倒していく。この「青葉屋」の場面の最大の見せ場は、女子高校生用心棒のGOGO夕張(栗山千明)との対決だと思う。

 ご説ごもっとも。僕もそう思うよ(笑)。

ニュース速報

ビジネス

中国人民銀次期総裁、劉鶴政治局委員が最有力=関係筋

ビジネス

米政権、北朝鮮に大規模な制裁 船舶・海運会社など対

ビジネス

アングル:欧州企業の業績上振れ鮮明、通期2桁増益予

ビジネス

日産とDeNAが実証実験、「技術革新の先」の移動サ

MAGAZINE

特集:韓国人の本音 ピョンチャン五輪と南北融和

2018-2・27号(2/20発売)

平昌五輪での北朝鮮の融和外交が世界を驚かせたが、当の韓国人は南北和解と統一をどう考えている?

グローバル人材を目指す

人気ランキング

  • 1

    北朝鮮スケート選手の妨害に、日本人選手「故意ではない」

  • 2

    銃乱射を生き残った高校生たちに全米から誹謗中傷なぜ?

  • 3

    【動画】ショートプログラム歴代最低の3点!──羽生結弦と真逆の演技はこれだ

  • 4

    思わず二度見してしまう、米スピードスケート代表ユ…

  • 5

    「クラスで一番の美人は金正恩の性奴隷になった」

  • 6

    仮想通貨バブルの崩壊で、腐ったリンゴを取り除け

  • 7

    北朝鮮「スリーパーセル」論争に隠された虚しい現実

  • 8

    オランダのスケート選手「犬を大切にして」に韓国ネ…

  • 9

    韓国人が「嫌いな国」、中国が日本を抜いて第2位に浮上

  • 10

    ベネズエラ版ビットコイン「ペトロ」は新手の仮想通…

  • 1

    北朝鮮スケート選手の妨害に、日本人選手「故意ではない」

  • 2

    265年に1度? 31日夜、「スーパー・ブルー・ブラッドムーン」が空を彩る

  • 3

    マイナス40度でミニスカ女子大生の脚はこうなった

  • 4

    「クラスで一番の美人は金正恩の性奴隷になった」

  • 5

    「売春島」三重県にあった日本最後の「桃源郷」はい…

  • 6

    銃乱射を生き残った高校生たちに全米から誹謗中傷な…

  • 7

    北朝鮮と戦う米軍兵士は地獄を見る

  • 8

    北朝鮮に帰る美女楽団を待ち伏せしていた「二重脱北…

  • 9

    「逆にいやらしい」忖度しすぎなインドネシアの放送…

  • 10

    50歳以上の「節操のないセックス」でHIV感染が拡大

日本再発見 シーズン2
デジタル/プリントメディア広告セールス部員募集
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版 特別編集

丸ごと1冊 トランプ

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2018年2月
  • 2018年1月
  • 2017年12月
  • 2017年11月
  • 2017年10月
  • 2017年9月