最新記事

国交正常化

キューバ、歴史的共同会見と禁輸解除への道

オバマとカストロは遂に握手したが、政治犯など人権問題は未解決のまま

2016年3月22日(火)17時30分
テイラー・ウォフォード

皮肉 賃金水準は低くても男女同一だ、とカストロは米記者団に言った Carlos Barria-REUTERS

 アメリカのバラク・オバマ大統領とキューバのラウル・カストロ国家評議会議長は昨日、ホワイトハウス記者団からの質問を受けた。両国にとって歴史的な共同記者会見だ。カストロは、報道の自由に不慣れなところも垣間見せた。

「半世紀以上もの間、アメリカの大統領がここハバナにいる光景は想像もできなかった。今日は新たな時代の始まりだ」とオバマは言った。

 オバマは、自らの政権が両国間の緊張緩和のために行ってきた取り組みを強調した。

 オバマが最初にキューバ政策で新たな方向性を打ち出したのは2014年12月。それ以来、いくつもの政策変更を行ってきた。2015年5月にはキューバのテロ支援国家指定を解除。同年7月には、半世紀以上断交が続いた両国は、それぞれハバナとワシントンにある大使館を再開して正式に国交を回復した。

【参考記事】オバマの歴史的キューバ訪問で、グアンタナモはどうなる?

【参考記事】アメリカと和解したカストロ政権の大ばくち

 2016年には郵便が回復。最初の郵便物にはオバマが76歳のキューバ人女性に宛てた手紙も含まれており、3月にキューバに届けられたという。アメリカの航空会社も、キューバとの直行便を復活させようとしている。「渡航を容易にして以来、キューバ系アメリカ人の里帰りが増えている」とオバマは言い、キューバの近代化においてキューバ系アメリカ人コミュニティーが重要な役割を果たせることを強調した。

【参考記事】渡航自由化、キューバの本音

平均月収はわずか20ドル

 しかしオバマは、国交回復後の課題も忘れていない。「われわれは、半世紀分の仕事を抱えている」と、オバマは言った。「両国政府間の関係は一夜にして一変できるものではない」

 米国とキューバの間には、民主主義や人権をめぐる「きわめて深刻な相違」があるとオバマは言った。オバマがキューバに到着する数時間前にも、ハバナでは50人を超える民主化活動家が警察に逮捕されている。

 カストロは、キューバでは、医療も教育も無料であることなど、革命政府による優れた実績を強調した。

 しかし、CNNやMSNBCなどアメリカの報道陣から遠慮のない質問が飛ぶと、カストロは少し動揺したように見えた。今も拘束されている多くの政治犯に関して質問されると、カストロは「そんな囚人がいるならリストを出してほしい。そうすれば今夜中にも釈放する」とスペイン語で言った。またキューバは賃金が低く、国民の平均月収がわずか約20ドルである点について質問されると、キューバでは少なくとも男女の賃金は同じだとして、いまだに男女格差が残るアメリカを皮肉った。

 退任まで残すところ9カ月となったオバマは、今度はキューバが行動を起こす番だと訴えた。「われわれが政府としてできる事は少なくなりつつある」と述べ、もしキューバが禁輸措置の解除など国交正常化の継続を望むなら、人権問題で目に見える進歩を米議会に見せる必要があることを示唆。また、より貿易や投資にも国を開くべきだとほのめかした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英シェル、トリニダード経由でベネズエラ産ガス輸出へ

ワールド

ハンガリー総選挙、トランプ氏がオルバン首相支持表明

ビジネス

高市首相、3月19日に訪米で調整 トランプ氏の招待

ビジネス

過度な利上げで物価と賃金の循環壊さないよう、慎重に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新世論調査が示すトランプ政権への評価とは
  • 2
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近したイラン製ドローンを撃墜
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    「右足全体が食われた」...突如ビーチに現れたサメが…
  • 5
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 6
    「反トランプの顔ぶれ」にMAGAが怒り心頭...グリーン…
  • 7
    ユキヒョウと自撮りの女性、顔をかまれ激しく襲われ…
  • 8
    エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流してい…
  • 9
    地球の近くで「第2の地球」が発見されたかも! その…
  • 10
    「エプスタインは悪そのもの」「悪夢を見たほど」──…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 3
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「副産物」で建設業界のあの問題を解決
  • 4
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染…
  • 5
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 6
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 7
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 8
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 9
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中