最新記事

ニュースデータ

日本では教育現場だけがICT化から取り残されている

2016年3月15日(火)15時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

 他国との相対比較もしてみよう。同じやり方で、43カ国の学校内外のICT利用度スコアを計算してみた。<図1>は、横軸に学校外、縦軸に学校内のスコアをとった座標上に、43カ国を配置したグラフだ(米英仏は、「PISA 2012」のICT利用状況調査には回答していない)。

maita160315-chart02.jpg

 日本は学校外・学校内とも、利用度スコアの平均が最も低い。教育のICT化が、世界で最も遅れた社会だ。日本の生徒のパソコンスキルは世界最下位という調査結果(自己評定による)があるが、謙虚な回答ゆえではないかもしれない(【参考記事】「日本の学生のパソコンスキルは、先進国で最低レベル」)。

 デンマークやノルウェーなど、東欧・北欧の国々では、ICTの利用度が高い。ICT教育先進国のデンマークでは、生徒や保護者とのやり取りが電子化され、授業も講義形式が主流ではなく、コンピューターを使ったグループワークが盛んに行われている。日本のような大学受験がないため、知識探求型の学習を多く取り入れられるのだろう。

 日本でも、学習者が能動的に参加する「アクティブ・ラーニング」が推奨されているが、それにはコンピューターの活用が不可欠となる。スマホの校内持ち込みを禁止している学校が多いが、こうした機器を授業でもっと活用してもよいはずだ。

 2018年の学習指導要領改訂では、探求的・問題解決的な学習が重視され、大学入試もこうした資質を測る方向に動いているが、そのためには教育のICT化を進めることが条件となる。しかし教育現場が現状のままでは、こうした改革案も「絵に描いた餅」で終わる可能性が高い。

 グローバル化・情報化の波にさらされているのは日本も同じで、国内の企業はそれに対応している。予想だが、企業のICT利用度スコアを出したら、日本は国際的に中位ないしは上位に食い込むのではないか。しかし学校は、見ての通り最下位だ。だとしたら、学校は社会から浮いていることになる。

 情報化社会では、教育も情報化しなければならない。教育のICT化を進め、情報化社会を生き抜く力を持った人材を育成しなければ、日本の社会はいずれ世界で沈没してしまう。

<資料:OECD「PISA 2012」

≪筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ

ニュース速報

ビジネス

英GDP確報値、第4四半期は前期比+0.1% 景気

ビジネス

米テスラのマスク氏、訪中を計画 李首相との面会模索

ビジネス

情報BOX:半導体製造装置の輸出規制、対象品目と企

ビジネス

シェル、再生エネ・低炭素事業の組織再編

今、あなたにオススメ

MAGAZINE

特集:小泉悠×河東哲夫 ウクライナ戦争 超分析

2023年4月 4日号(3/28発売)

戦争の「天王山」/ウクライナ戦車旅団/プーチンの正体......。日本有数のロシア通である2人の特別対談・前編

メールマガジンのご登録はこちらから。

人気ランキング

  • 1

    生地越しにバストトップが... エムラタ、ばっさりショートに「透け過ぎ」衣装でベッドにごろり

  • 2

    北朝鮮軍の「エロい」訓練動画に世界が困惑!

  • 3

    女性兵士50人が犠牲に...北朝鮮軍が動揺した「鬼畜事件」

  • 4

    北朝鮮の「プリンセス」キム・ジュエ、栄養失調の国民よ…

  • 5

    ロシアとの戦いで「ウクライナ軍は世界一の軍隊にな…

  • 6

    【レア動画4選】ウクライナとロシア戦車の一騎討ち<…

  • 7

    金融のドミノ倒し、次はドイツ銀行か

  • 8

    大事な部分を「羽根」で隠しただけ...米若手女優、ほ…

  • 9

    習近平とプーチンの「兄弟関係」が逆転...兄が頼りの…

  • 10

    大丈夫? 見えてない? テイラー・スウィフトのライ…

  • 1

    生地越しにバストトップが... エムラタ、ばっさりショートに「透け過ぎ」衣装でベッドにごろり

  • 2

    「見られる価値のない体なんてない」 車椅子に乗った障がい者女性が下着モデルに...批判にも大反論

  • 3

    大丈夫? 見えてない? テイラー・スウィフトのライブ衣装、きわどすぎて観客を心配させる

  • 4

    金融のドミノ倒し、次はドイツ銀行か

  • 5

    北朝鮮軍の「エロい」訓練動画に世界が困惑!

  • 6

    女性兵士50人が犠牲に...北朝鮮軍が動揺した「鬼畜事…

  • 7

    大事な部分を「羽根」で隠しただけ...米若手女優、ほ…

  • 8

    北朝鮮の「プリンセス」キム・ジュエ、栄養失調の国民よ…

  • 9

    「次は馬で出撃か?」 戦車不足のロシア、1940年代の…

  • 10

    「ベッドでやれ!」 賑わうビーチで我慢できなくなっ…

  • 1

    大事な部分を「羽根」で隠しただけ...米若手女優、ほぼ丸見えドレスに「悪趣味」の声

  • 2

    推定「Zカップ」の人工乳房を着けて授業をした高校教師、大揉めの末に休職

  • 3

    【写真6枚】屋根裏に「謎の住居」を発見...その中には...

  • 4

    ざわつくスタバの駐車場、車の周りに人だかり 出て…

  • 5

    生地越しにバストトップが... エムラタ、ばっさりシ…

  • 6

    年金は何歳から受給するのが正解? 早死にしたら損だ…

  • 7

    【悲惨動画3選】素人ロシア兵の死にざま──とうとう…

  • 8

    プーチンの居場所は、愛人と暮らす森の中の「金ピカ…

  • 9

    ウクライナ軍兵士の凄技!自爆型ドローンがロシア戦…

  • 10

    「この世のものとは...」 シースルードレスだらけの…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中