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注目される積極財政論、日本が抱える格下げリスク

2016年2月26日(金)10時51分

 また、日本は需給ギャップがほぼ解消した状態にある。「その状態では1─2兆円程度の財政出動をしても効果は限定的だ。経済に大きな刺激を与えるには10─20兆円といった規模が必要になる」と、SMBC日興証券・シニアマーケットエコノミストの嶋津洋樹氏は指摘する。

 さらに機動性にも問題が残る。日本の国会では、2016年度予算案を審議中だ。補正予算を編成するなら、その後になる。また、補正予算はあくまで短期的な措置である。景気下振れを防ぐ効果はあっても「来年度は予算がつかないと思えば効果も薄れる」(外資系証券エコノミスト)との指摘も出ている。

 日本の「財政政策」としては、10%への消費再増税の見送りという選択肢もある。17年4月に予定している消費増税の実施を延期すれば、景気下押し圧力は軽減されるとの見方も多い。

 一方、消費増税を予定通り実施したうえで、補正予算を組むという選択肢もある。ただ、それではブレーキとアクセルを同時にかけるようなものとの批判も出よう。

失われた「警報機能」

 
 大規模な財政出動や消費再増税見送りには、リスクも伴う。市場が警戒するのが、日本国債の格下げだ。

 現在、日本国債の格付けはS&PがA+(見通しは安定的)、ムーディーズがA1(同)。金融機関が自己資本を計算する上でのリスクウエートが上昇するBBB+・Baa1まで3段階、ジャンク級まで6段階あり、1段階程度の格下げでは、大きな影響は出ないかもしれない。

 しかし、市場では「ヘッジファンドなど海外勢の売り材料になる可能性がある」(国内銀行ストラテジスト)との警戒感も強い。海外勢の日本国債保有シェアは昨年末時点で10%弱に上昇。かつてのような国内勢だけのマーケットではなくなっている。

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