最新記事

自動車

燃料電池車はテスラに勝てるか

2016年2月15日(月)16時45分
ジャクリン・トロップ

 自動車メーカーも水素ステーションに投資している。ホンダとトヨタは14年、カリフォルニア州で水素ステーション開設を支援するために、ファーストエレメント・フュエルという燃料小売企業にそれぞれ1380万ドルと720万ドルを資金提供した。トヨタは、ニューヨークやボストンの都市圏で12カ所のステーションの建設を支援することも表明している。

 FCV普及の先頭を走るのは日本だ。安倍晋三首相は、2020年東京五輪に向けて「水素社会の構築」という目標をぶち上げた。その一環として、FCV購入者への約202万円の補助金支給を打ち出し(これに上乗せして、自治体独自の補助金を受給できる場合もある)、官庁にもFCV導入を促している。

 ただし日本でも、水素ステーションの整備は遅れ気味だ。今年3月末までに100カ所の開設を目指していたが、実際には80カ所程度にとどまる見通しだ。

 多くの新しいテクノロジーがそうであるように、FCVの普及は、消費者に購買意欲を抱かせられるかどうかに懸かっている。しかし日本のような補助金制度がなければ、FCVはかなり高価になる可能性がある。

「MIRAI」のアメリカ市場での販売価格は、工場から販売店までの運送料を別にして最低5万7500ドルだ(日本では723万6000円。ホンダの「クラリティ」は766万円を予定し、アメリカでの販売価格は未発表)。

 生産量が増えれば部品単価が下がり、販売価格も安くなるだろうが、当座は高価な買い物と言わざるを得ない(それでも、最低約7万ドル以上するテスラのEV「モデルS」に比べれば安いのだが)。

【参考記事】自動運転でも手を離せないテスラの大いなる矛盾

 トヨタは、アメリカにおけるMIRAIの販売目標を来年末までに3000台としている。ホンダはもう少し控えめで、差し当たり日本で200台の販売を目指している(アメリカでの販売予定時期は明らかにされていない)。

 韓国の現代自動車は14年、カリフォルニア州南部の数十の顧客に、コンパクトSUV「ツーソン」のFCVモデルをリース販売し始めた。「需要が増えれば、大量生産できる体制は整っている」と、同社の広報担当者は胸を張る。

FCVに舵を切るトヨタ

 こうした日韓の自動車メーカーとは異なり、EVに力を入れるテスラのイーロン・マスクCEOは、FCVを声高に批判してきた。燃料電池(フュエル・セル)は「愚者の電池(フール・セル)」だと揶揄し、人気に火が付く可能性は低いと述べている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

韓国LGエナジー、第1四半期は前年比75%営業減益

ワールド

米、ウクライナに長距離ミサイル供与 既に実戦使用

ワールド

原油先物は下落、米利下げ後ずれによる影響を懸念

ビジネス

香港のビットコイン・イーサ現物ETF、来週取引開始
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 9

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中