最新記事

エジプト

アラブ「独裁の冬」の復活

2015年12月8日(火)18時00分
ジャニーン・ディジョバンニ、ノア・ゴールドバーグ

「アラブの春で民主主義の種はまかれた。あれですべてが変わり、もう後戻りはできない。だが勇気ある人々を支える唯一の方法は精神的な支援であり、金銭ではない」

 シシの人気が本物かどうかを判断するのは難しい。各種の世論調査は国軍が尊敬されていることを示しているが、うのみにはできない。エジプトの反体制派の大半は沈黙を強いられ、あるいは国外に脱出している。ジャーナリストは脅され、従わなければ監禁される。

 シシの支持率については「何とも言えない」とキニンモントは言う。「決して熱狂的に支持されているわけではない。国民にはあまり選択肢がない。軍事政権かイスラム主義の政権か、二つに一つだ」

 そんな状況でISISの一派がロシアの旅客機を爆破し、パリでも大規模な同時テロを起こした。エジプト軍は以前からシナイ半島でテロリストと戦っているが、シシが対テロ戦を一段と強化するのは確実だ。この機に乗じて反政府派への弾圧を強めるのも確実だが、それでも欧米社会は口を出せないだろう。

 ブルッキングズ研究所のハミドが言う。「アラブの春の、あるいはアラブの春をつぶした経験から得られる教訓は何か。残虐な力は効く、暴力は効くという悲しい教訓だ」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ブラジル中銀、金利据え置き戦略は適切と現時点で結論

ビジネス

米テスラ、カリフォルニア州で販売停止命令 執行は9

ワールド

カナダ、北極圏2カ所に領事館開設へ プレゼンス強化

ワールド

香港トップが習主席と会談、民主派メディア創業者の判
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 7
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 8
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 9
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中