最新記事

民主化

中国民主活動家締めつけに見る習近平の思惑

2015年11月30日(月)16時30分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

公共の秩序の「敵」 当局の指示による記事改ざんに抗議して懲役6年を言い渡された民主活動家、郭飛雄 VOA-WIKIMEDIA COMMONS

 民主活動家・郭飛雄氏に6年の懲役刑が言い渡された。起訴時にない罪名が加わっている。筆者の親友で81歳になる鉄流氏の逮捕および懲役刑とともに、習近平は何を恐れ、中国で何が起きているのかを解きほぐそう。

民主活動家・郭飛雄氏の懲役刑――新公民運動が真の理由

 リベラルな論調で知られる広東省の新聞「南方周末」は2013年の新年特集として「中国の夢、憲政の夢」というタイトルの記事を出そうとしていた。「憲法に基づいて自由と民主を実現しよう」という内容だった。胡錦濤元総書記が2012年11月8日の第18回党大会で繰り返し主張した「政治体制改革」を習近平政権が実現するか否か、その決意のほどが試される記事であったといっていい。

 ところがこの記事は中国共産党広東省委員会宣伝部によって掲載を禁止され、「こんにちの中国は民族復興の偉大な夢に最も近づいた」という中国共産党礼賛記事に置き換えられるという「事件」があった。(この事件に関しては2013年1月9日付けの日経ビジネスオンライン<中国に言論の自由はいつ来るのか?>で詳述。)

 このとき街頭で抗議活動に加わった者の中に、郭飛雄(本名:楊茂東)という民主活動家がいる。彼は1966年生まれの弁護士で(華東師範大学卒)、新公民運動に参加している民主活動家でもある。「新公民運動」とは、「自由、正義、愛」による公民の権利を守っていこうとする新しい民主化運動で、孫文が書いた「公民」という文字をロゴにしている。2010年ころに、法学者の許志永氏(エール大学客員教授)や王功権氏(ベンチャーキャピタリスト)など、エリート層が始めた運動だ。

 2014年1月27日付の<「新公民運動」に怯える習近平政権――提唱者に懲役刑>に書いたように、習近平政権になってから、提唱者はつぎつぎに捕えられ懲役刑を受けている。

 郭飛雄氏が初めて目を付けられるようになったのは、2005年4月末に「日本の右翼の反動的な言論に抗議する」ということを口実にして、「五四抗議デモを行なうこと」を北京市公安当局に申請したからだ。申請は不許可になっただけでなく、「民衆を扇動して公共の秩序を乱した罪」により15日間、拘留された。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

日米関税合意「大きな前進」、見通し実現していけば利

ビジネス

三菱電、営業益4─6月期として過去最高 インフラな

ビジネス

日経平均は5日ぶり反発、米ハイテク決算好感 日米中

ビジネス

みずほFG、純利益予想1兆円超に上方修正 三井住友
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから送られてきた「悪夢の光景」に女性戦慄 「這いずり回る姿に衝撃...」
  • 3
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目にした「驚きの光景」にSNSでは爆笑と共感の嵐
  • 4
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 5
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 6
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    M8.8の巨大地震、カムチャツカ沖で発生...1952年以来…
  • 9
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 10
    「自衛しなさすぎ...」iPhone利用者は「詐欺に引っか…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 8
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 9
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 10
    タイ・カンボジア国境で続く衝突、両国の「軍事力の…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中