最新記事

領土問題

フィリピン、中国との領有権争いの切り札は

南シナ海に面した要衝、スービック湾にある元米軍基地の利用再開を急ぐ

2015年7月31日(金)17時11分
プラシャント・パラメスワラン

米軍が戻ってくる? 今は修理や補給に限られている米軍の役割も拡大される可能性がある Romeo Ranoco-REUTERS

 フィリピンが来年早々にも、スービック湾にある旧米海軍基地の再利用を開始する。

 7月中旬、フィリピン国防省のピーター・ガルベス報道官は、スービック湾にフィリピン軍の戦闘機と艦艇を配備すると発表。米国外で最大級だった米海軍基地が92年に返還されて以来、初となる基地利用の再開だ。

 スービック湾への配備は、間違いなくフィリピン軍の存在感を高めることになる。スービック湾は領有権問題に揺れる南シナ海に面し、フィリピンが中国と領有権を争うスカボロー礁からは270キロほどの距離だ。

 スカボロー礁をめぐってフィリピンは13年、オランダ・ハーグにある仲裁裁判所に提訴。国連海洋法条約に基づく仲裁を求める一方で、軍事力強化も進めている。その一環として、米軍にスービック湾の再度の利用を認めることもありそうだ。

 米軍は00年から、スービック湾への艦船の定期寄港を再開しているが、目的は修理や補給に限られている。昨年署名された両国間の新軍事協定に基づき、今後は米軍による利用が大幅に拡大される可能性があると、フィリピン国防省の幹部はロイターの記事で語っている(新軍事協定は憲法違反だとの訴えを受け、現在最高裁で審理中)。

 大切なのは計画を確実に、そして早期に実行できるかだ。スービック湾の基地利用再開は、「アジア最弱」と言われるフィリピン軍の現代化を急務とする政府にとって強い味方になる。それでも、中国をはじめとする近隣国の軍事力に追い付くには、長い時間がかかるだろう。

 タイミングも重要だ。中国は南シナ海での人工島建設を「完成」させており、仲裁裁判所による手続きを拒否している。中国が軍事力にものをいわせてフィリピンを脅かしている事実も考えれば、中国が自国に都合のいい方向へ、現状を急変更しようとしているのは明らかだ。

 フィリピンには、ぼやぼやしている暇はない。

[2015年8月 4日号掲載]

ニュース速報

ワールド

アングル:サンダース氏がネバダで圧勝、民主指名争い

ワールド

サンダース氏がネバダで圧勝、バイデン氏2位 米民主

ワールド

お知らせ-重複記事を削除します

ワールド

ウイルス潜伏、中国で27日間の症例 想定より長い可

MAGAZINE

特集:上級国民論

2020-2・25号(2/18発売)

特権階級が不当に罪を逃れている── 日本を席巻する疑念と怒りの正体

人気ランキング

  • 1

    「部外者」には分かりにくい、日本の見えないマナー違反

  • 2

    new-style(新型)coronavirus, stay reki(渡航歴)...厚労省の新型ウイルス情報の英語がひどかった

  • 3

    映画「パラサイト」に隠れている韓国のもう一つの「リアルさ」

  • 4

    クルーズ船対応に見る日本の組織の問題点──権限とス…

  • 5

    感染者2200万人・死者1万人以上 アメリカ、爆発的「イ…

  • 6

    3年前に亡くなった7歳の娘と「再会」 韓国、VRを使った…

  • 7

    殺害した女性の「脳みそどんぶり」を食べた男を逮捕

  • 8

    ロイヤルウェディングの招待状がほのめかしていたメ…

  • 9

    性的虐待への巨額賠償が、米ボーイスカウト連盟を破…

  • 10

    「独島が韓国の領土であるとの証拠は何もない」韓国…

  • 1

    夜間に発電できる「反ソーラーパネル」が考案される

  • 2

    文在寅を見限った金正恩......「新型コロナ」でも問答無用

  • 3

    ロイヤルウェディングの招待状がほのめかしていたメーガン妃の離婚歴

  • 4

    「部外者」には分かりにくい、日本の見えないマナー…

  • 5

    殺害した女性の「脳みそどんぶり」を食べた男を逮捕

  • 6

    スキー・スノボに行かなくなった(行けなくなった)…

  • 7

    感染者2200万人・死者1万人以上 アメリカ、爆発的「イ…

  • 8

    新型コロナウイルスはコウモリ由来? だとしても、…

  • 9

    新型コロナウイルス、人口2.6億のインドネシアで感染…

  • 10

    クルーズ船内「悲惨な状態」 神戸大・岩田健太郎教授、…

  • 1

    「歯肉から毛が生えた」という女性の症例が世界で初めて報告される

  • 2

    一党支配揺るがすか? 「武漢市長の会見」に中国庶民の怒り沸騰

  • 3

    ヒヒにさらわれ子どもにされた子ライオンの悲劇

  • 4

    マスク姿のアジア人女性がニューヨークで暴行受ける

  • 5

    新型コロナウイルスはコウモリ由来? だとしても、…

  • 6

    夜間に発電できる「反ソーラーパネル」が考案される

  • 7

    「武漢はこの世の終末」 チャーター機乗れなかった米…

  • 8

    韓国で強まる、日本の放射能汚染への懸念

  • 9

    BTSと共演した韓国人気子役がYouTubeで炎上 虐待さ…

  • 10

    「拷問死したアメリカ人学生」がはばむ文在寅の五輪…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
CCCメディアハウス求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2020年2月
  • 2020年1月
  • 2019年12月
  • 2019年11月
  • 2019年10月
  • 2019年9月