最新記事

旧ソ連圏

クリミアでウクライナ系住民への逆襲が始まる

ロシア編入への機運が高まるなか、少数派のウクライナ系住民に対する敵意が増幅

2014年3月24日(月)12時42分
ダン・ペレシュク

抑圧の足音 ロシア編入後はウクライナ系市民が窮地に? Shamil Zhumatov-Reuters

 ロシア編入の是非を問う住民投票をめぐって揺れているウクライナ南部のクリミア自治共和国。その主要都市である人口約37万人のセバストポリは、歴史的にソ連時代への郷愁が強い。

 ロシア軍が実権を掌握し、親ロシアの自治政府がクリミアのロシア編入を既成事実のように語るのを、少数派のウクライナ系住民は不安な思いで見守ってきた。住民投票に反対する活動家の失踪が相次ぎ、2月に親ロシアのヤヌコビッチ政権に代わって権力を握ったウクライナ暫定政権に対する中傷キャンペーンも続いている。

 セバストポリは法的にはウクライナ領だが、歴史的にはロシアとの結び付きが強い。18世紀後半にエカテリーナ2世が軍港として建設して発展。以来、ロシア海軍の黒海艦隊の拠点として、またロシアの軍事力の象徴として、ロシア人にとっては特別な場所になっている。

 19世紀半ばのクリミア戦争と第2次大戦中の2度にわたって攻防戦の舞台となったことでも知られる。黒海艦隊の兵士が英雄として歓迎され、町のあちこちにロシア国旗がはためく。

既に始まったメディアへの抑圧

 一方で、ウクライナ暫定政府を非合法な「ファシスト政府」と見なす人が多く、暫定政府を支持するデモは当然歓迎されない。9日にはウクライナの国民的詩人タラス・シェフチェンコの生誕200年記念集会を親ロシア派が襲撃。10日には、ウクライナ寄りの活動家がクリミア各地で行方不明になっていると報じられた。

 露骨な情報遮断も行われている。セバストポリでは大手ケーブル局が、ウクライナ系チャンネルを放送できなくなった。クリミア各地のネットワーク局からもウクライナの番組が姿を消した。代わって地元局では16日の住民投票の告知が、ロシア国旗に覆われたクリミア半島の映像と共に流れた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パキスタン、国防相が核管理会議の招集否定 インドに

ワールド

韓国与党、大統領選候補指名やり直し 韓前首相に一本

ビジネス

中国4月CPI3カ月連続下落、PPI下落加速 貿易

ビジネス

米政権、航空機・部品輸入を調査 追加関税の可能性
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 2
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 3
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノーパンツルックで美脚解放も「普段着」「手抜き」と酷評
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    ロシア機「Su-30」が一瞬で塵に...海上ドローンで戦…
  • 6
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 7
    指に痛みが...皮膚を破って「異物」が出てきた様子を…
  • 8
    「股間に顔」BLACKPINKリサ、ノーパンツルックで妖艶…
  • 9
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 10
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食品」とは?...理想は「1825年の食事」
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 6
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 7
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 8
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 9
    SNSにはトップレス姿も...ヘイリー・ビーバー、ノー…
  • 10
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    心臓専門医が「絶対に食べない」と断言する「10の食…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中