最新記事

化学兵器

ロシアはシリアから化学兵器を奪い取れるか

アメリカの対シリア攻撃を、ロシアがシリアに化学兵器を廃棄させて回避するというが

2013年9月10日(火)15時46分
ジョシュア・キーティング

大国も口だけ 生物化学兵器対策の訓練をするロシア軍兵士 Kazbek Basayev-Reuters

 化学兵器を使用したとされるシリアのアサド政権に対して、アメリカが武力行使に踏み切るかどうか。緊張が高まるなか、ロシアが仲介役として存在感を高めている。アメリカの攻撃を回避するため、すべての化学兵器を国際監視の下に引き渡して廃棄するよう、アサド政権に働きかけているのだ。

 もっとも、そのロシアも、自国内の化学兵器の管理状況はお粗末なものだ。ロシアはかつて、少なくとも4万トンの化学兵器を保有していたが、開発や生産を包括的に禁じた化学兵器禁止条約を97年に批准し、廃棄処分を進めてきた。ロシア政府は当初、07年までにすべての廃棄を完了するとしていたが、01年の時点で12年に延期。しかし、12年までに廃棄された化学兵器はわずか62%だった。

 当局は、期限を15年に再度延期したが、今ではそれすら実現が危ぶまれている。ロシアメディアは今年4月、廃棄の完了は2020年になるだろうと報じた。

 その影響はシリアにも及んでいるかもしれない。アメリカのヘーゲル国防長官は先週、アサド政権が使った化学兵器の一部はロシアから流出した可能性があると語った。シリアが保有する化学兵器は、かつてのロシアほど大量ではないだろうが、シリア国内に広く分散しており、数週間以内にすべてを回収して廃棄処分にするのは不可能とみられる。

 もっとも、化学兵器の廃棄が進まないのはロシアだけではない。アメリカもたびたび廃棄期限を延長しており、いまだに完了していない。

© 2013, Slate

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、選挙での共和党不振「政府閉鎖が一因」

ワールド

プーチン氏、核実験再開の提案起草を指示 トランプ氏

ビジネス

米ADP民間雇用、10月は4.2万人増 大幅に回復

ワールド

UPS貨物機墜落事故、死者9人に 空港は一部除き再
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面に ロシア軍が8倍の主力部隊を投入
  • 4
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 5
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇…
  • 6
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 7
    若いホホジロザメを捕食する「シャークハンター」シ…
  • 8
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中