最新記事

北朝鮮

金正恩を「戦闘態勢」に駆り立てる事情

アメリカ攻撃のために砲兵部隊を配備。今回は虚勢だけで終わらない可能性も

2013年3月27日(水)15時16分
ジェフリー・ケイン、ダニエル・デフレイア

攻撃準備 朝鮮人民軍の軍事演習を指揮する金正恩 KCNA-Reuters

 北朝鮮が26日、米軍基地を攻撃対象として長距離砲兵部隊などを「戦闘勤務態勢」に入らせたと発表した。軍最高司令官である金正恩(キム・ジョンウン)第1書記の命令で、アメリカ本土とハワイ・グアム沖にある米軍基地を標的としているという。

 前日の25日には、北朝鮮の国営メディアが金正恩が緊急軍事演習を指揮したと伝え、その様子の写真も公開していた。日本海沖で行われた演習で、金正恩は陸海軍の「上陸と上陸阻止」訓練を視察したという。

 北朝鮮が今回発表した声明はこうだ。「朝鮮人民軍の最高司令官は、長距離砲兵部隊や戦略ロケット部隊などを含むすべての野戦砲兵隊を第1号戦闘勤務態勢に突入させた」

 このような発言は通常なら、大言壮語として無視されるだろう。北朝鮮が韓国の首都ソウルを「火の海」にしてやると息巻いたり、アメリカに攻撃を仕掛けてやると虚勢を張るのはいつものことだからだ。

 だが今回は、懸念すべき要素がいくつかある。北朝鮮はこの数週間、韓国やアメリカに対する脅し文句を日々エスカレートさせている。言葉だけでなく、黄海に船舶と航空機の航行禁止区域を設定し、ミサイル発射訓練の準備に入ったとも伝えられた。

米韓軍事演習のB52機に反発

 大半の専門家はアメリカ攻撃の可能性はないと見ている。とはいえ延坪島砲撃のように挑発的発言を行動に移すこともある。専門家の間では、黄海の韓国海軍や漁船へ向けて軍艦を送るのではないかとの憶測が飛んでいるが、いつどこが攻撃されるかは誰にも分からない。

 ほかにも懸念すべき要素はある。まず、韓国による北朝鮮への昨年の支援額が過去10年で最低だったことだ。財政難に陥った金政権がまたも瀬戸際外交に出て、韓国の朴新政権から支援を引き出そうとしているとも考えられる。

 また国連が先週、北朝鮮の強制収容所での拷問など人権侵害を調査するための特別委員会設置を決めたことも、金正恩の怒りを煽ったのかもしれない。金政権と直接関与しなければならない微妙な立場にある韓国政府は、いつもなら北朝鮮の人権侵害について黙認しがちだが、今回は決議案支持にまわった。

 北朝鮮の「脅しのレトリック」が強まっているのは、今月11日に米韓合同軍事演習が始まってからだ。この軍事演習では、米軍のB52爆撃機も参加して、朝鮮半島上空を飛んでいた。

 米国防総省のジャック・ミラー中佐は北朝鮮の声明に対し、「アメリカは自国と同盟国を守る万全の軍事力を有している」と語った。「韓国と日本の防衛を約束する」

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米政権、鉄鋼・アルミ関税引き下げ報道を否定 「決定

ビジネス

米CPI、1月は2.4%に鈍化 基調インフレ圧力は

ワールド

米政権、ハーバード大を提訴 「入試の人種考慮巡る捜

ワールド

五輪=CAS、「追悼ヘルメット」のウクライナ選手の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の定説に挑む、3人の日本人科学者と外科医
  • 4
    50歳には「まったく見えない」...信じられないレベル…
  • 5
    川崎が「次世代都市モデルの世界的ベンチマーク」に─…
  • 6
    「罠に嵌められた」と主張するが...欧州で次々と摘発…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    毛沢東への回帰? それとも進化? 終身支配へ突き…
  • 9
    「ドルも弱い」なのになぜ、円安が進む? 「ドル以外…
  • 10
    「賢明な権威主義」は自由主義に勝る? 自由がない…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 5
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 6
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 7
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 8
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 6
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 7
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 8
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 9
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 10
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中