最新記事

朝鮮半島

北朝鮮「核よりサイバーのほうが安上がり」

韓国サイバー攻撃の「犯人」と疑われる北朝鮮は、世界でも有数の「ハッカー集団」だ

2013年3月21日(木)15時42分
フレヤ・ピーターセン、ジェフリー・ケイン

サーバーダウン 被害を受けたのは、YTN(写真)、KBC、MBCの3放送局と新韓銀行と農業銀行 Lee Jae-Won-Reuters

 韓国の銀行やテレビ局のサーバーが20日に一斉にダウンした問題で、サイバー攻撃を受けた可能性が高まっている。「第一容疑者」として疑いをかけられているのは、先日から韓国に対する脅しを強めている北朝鮮だ。

 政府機関や軍事施設での被害は報告されていないが、韓国国防省はサイバー攻撃の警戒レベルを、5段階中のレベル4からレベル3に引き上げた。

 原因を究明中の韓国国家情報院は、今のところ外部からの攻撃を裏付ける証拠は見つかっていないという。しかし韓国メディアは、北朝鮮がサイバー戦争における最後の一撃を仕掛けてきたとの憶測で持ちきりだ。

 北朝鮮は事実、アメリカや韓国に対し核攻撃も辞さないと脅しをかける一方で、サイバー攻撃も駆使している。ハッキングのほうが安上がりだし、犯人を特定しにくいからだ。

 金正恩(キム・ジョンウン)第1書記はIT分野を国家発展の柱の一つに掲げており、平壌には政府による訓練を受けた腕のいい「テクノロジーおたく」がたくさんいる。北朝鮮の大学はコンピューターの専門家を数多く育成し、彼らはサイバー攻撃のプロとして軍の仕事にも従事している。

 このようにIT立国であることに加え、最近の金正恩の好戦的なレトリックを勘案すれば、北朝鮮が今回の韓国へのサイバー攻撃に関与している可能性は十分に考えられるだろう。金将軍の強気の言葉を行動に移したというわけだ(芸のない行動ではあるが)。

「無人機」も保持している?

 北朝鮮がいつにも増して好戦的な発言をするようになったのは、今月初めに国連安保理が制裁強化の決議案を採択してからだ。先週には、国営の朝鮮中央通信(KCNA)などのウェブサイトが、韓国とアメリカによるサイバー攻撃を受けたと主張して、両国を激しく非難。だがそれを裏付ける証拠は何もなく、世界でも有数の「ハッカー集団」である北朝鮮が「被害者ぶって」騒ぎ立てていることが最大の皮肉だった。

 KCNAによれば、金正恩は先日も「敵が少しでも変な動きを見せれば」、アジア太平洋地域の米軍基地を攻撃すると発言。「もはや言葉だけで脅す時期は終わった。戦争の火ぶたが切って落とされれば、敵軍の誰一人として生き残れないよう容赦なく壊滅してやる」と、語気を強めているという。

 また20日付のKCNAは、金正恩が同日、「無人機」による軍事訓練を成功裏に指揮したと伝えた。米軍や韓国軍の巡航ミサイルを模した標的を見事に迎撃したという。北朝鮮が本当に無人機を保持しているかは定かではないが。

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

GMメキシコ工場で生産を数週間停止、人気のピックア

ビジネス

米財政収支、6月は270億ドルの黒字 関税収入は過

ワールド

ロシア外相が北朝鮮訪問、13日に外相会談

ビジネス

アングル:スイスの高級腕時計店も苦境、トランプ関税
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「裏庭」で叶えた両親、「圧巻の出来栄え」にSNSでは称賛の声
  • 2
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 5
    セーターから自動車まで「すべての業界」に影響? 日…
  • 6
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 7
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 8
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 9
    【クイズ】日本から密輸?...鎮痛剤「フェンタニル」…
  • 10
    日本人は本当に「無宗教」なのか?...「灯台下暗し」…
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 6
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 7
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 10
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中