最新記事

司法

船長逮捕でシー・シェパード万事休す

漁船に対する過激な攻撃で世界を騒がせ、ついに代表が「捕獲」された反捕鯨団体の運命は

2012年5月15日(火)18時20分
エレーヌ・ホフマン

やり過ぎ ワトソンは日本でも国際手配されている Jim Tanner-Reuters

 捕鯨船に船で体当たりするなどの過激な活動で注目を集める反捕鯨団体「シーシェパード」のポール・ワトソン代表(61)が5月12日、ドイツのフランクフルト国際空港で逮捕された。今後、コスタリカに身柄を移されて実刑判決を受ける可能性もある。
 
 カナダ生まれでアメリカ国籍のワトソンをドイツ警察が逮捕したのは、コスタリカ当局から逮捕状が出されていたから。シーシェパードは2002年に不法なサメ漁船を威嚇し、船員を危険にさらす行為を行ったとして国際手配されていた。

 コスタリカだけではない。シーシェパードによる調査捕鯨船への妨害行為を受けてきた日本も10年6月、ワトソンを国際手配していた(日本はドイツ、コスタリカと犯罪人引渡し条約を結んでいないため、日本への身柄引き渡しを強制することはできない)。

 14日に出廷したワトソンについて、弁護士のオリバー・ヴァラシュは「彼は(釈放を認めない)裁判所の判断にショックを受けている」と語り、「問題を解決するまでもう一晩拘置所で過ごすことになるかもしれない」とツイートした。

アザラシやサメ、イルカの狩猟者も攻撃

 市民参加型ニュースサイト、エグザミナー・ドットコムによれば、欧州と中南米で活動中のシーシェパード運動員は、ワトソンの釈放に向けて「24時間体制で動いている」という。だが裁判所はまだ最終的な結論を出しておらず、身柄拘束は少なくとも16日までは続く見込みだ。

 AFP通信は非営利組織のシー・シェパードについて次のように解説している。シーシェパードは公海における捕鯨などの「不法」行為に対抗する「直接行動のための革新的戦術」、つまり音響兵器や放水銃、悪臭弾を使った捕鯨船への攻撃に「自信をもっている」。さらに、アザラシ狩猟者の封じ込めにも熱心で、サメやイルカの保護にも乗り出しているという。

 仮にワトソンがコスタリカで収監された場合、求心力をなくしたシーシェパードは急速に勢いを失うかもしれない。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは156円前半でほぼ横ばい、日銀早期

ビジネス

中国万科の社債急落、政府支援巡り懸念再燃 上場債売

ワールド

台湾が国防費400億ドル増額へ、33年までに 防衛

ビジネス

インフレ基調指標、10月の刈り込み平均値は前年比2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 9
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中