最新記事

中国

中国の独身男は革命に興味なし

結婚できずに余っている2000万人もの若い男性が、中東の男たちのように革命に立ち上がらない理由

2011年3月9日(水)16時43分
キャスリーン・マクラフリン

デモの暇なし 血気盛んな独身男性が大勢いるはずなのに…… David Gray-Reuters

 革命の嵐が吹き荒れる中東で、反体制デモの中心になっているのが若い独身男性であることを考えれば、中国でも革命が起きて良さそうなものだ。しかし中国の独身男性は、反体制デモに関心があるようには見えない。

 人口動態の専門家らによれば、中国には現在、結婚相手を見つけられない独身男性が少なくとも2000万人いる。要は、男が多過ぎるのだ。2020年までには、男性が女性より3500万人も多くなると予測される。原因は、「一人っ子政策」と伝統的に男児をほしがる傾向だ。超音波技術で出産前に性別が分かることにより、女児の中絶も増加した。これらが重なって、80〜90年代生まれの世代の男女の人口比に大きな差が生じた。

 近年はこうした「男子偏重」傾向も改善されつつあるが、既に激増してしまった若年男性世代を減らすことはできない。ではなぜ、中国の男たちは一斉蜂起して共産党独裁政権に立ち向かわないのか? 簡単に言えば、彼らにそんな暇はないからだ。

 アジア地域の男性の増加と社会不安の関連を考察した『ベア・ブランチズ』の著者アンドレア・デンボーアは、中国の現状はエジプトとは異なると言う。

 中国には何千万という独身男性がいる。しかし景気は好調で、彼らが高い失業率に苦しむこともない。世界最速で成長するこの経済大国には、職がたくさんある。社会発展は国の隅々に行き渡り、仕事をきっかけにして数万人単位の若者がアフリカなど世界に出て行く。

「中国の独身男性は中東革命の『まね事』はできるかもしれないが、真の革命を起こすには動機が必要だ」と、デンボーアは言う。「経済成長が続き、失業率も低く、比較的安定した現状を見る限り、今の中国に大規模な反体制運動が起きる気配はない」

ネットで呼びかけても数百人止まり

 中国では、大都市での反政府デモを呼び掛ける匿名の投稿が2週続けてネットに出回った。これに応じて先月20日には北京で数百人が、その翌週には上海で数百人が街に繰り出したが、大きな「うねり」にはならなかった。今月6日にもデモを扇動する3回目の投稿があったが、公安当局が厳戒態勢を敷いたため不発に終わった。

 確かに中国で最も裕福な2大都市である北京と上海で、職のない若者が多数集まって決起するとは考えにくい。社会に対する不満を抱え暴動を起こすのは、むしろ経済発展が後れ当局の目も行き届かない内陸部のほうだろう。事実、中国では毎年10万件の「市民デモ」が起きていると推定されるが、大半は地方の問題に関することで、不満の矛先は地方の政府と企業に向いている。

「同じ地域に同じ世代の者が大勢集まっていれば、若者がデモの原因となる可能性はあるかもしれない」と、デンボーアは言う。

 それでも、中国ではこれまで地方レベルのデモが全国的な規模に発展したことはない。公安当局の厳戒態勢を考えれば、その状況は変わらないだろう。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国は重要な隣国、関係深めたい=日中首脳会談で高市

ワールド

米中国防相が会談、ヘグセス氏「国益を断固守る」 対

ビジネス

東エレク、通期純利益見通しを上方修正 期初予想には

ワールド

与野党、ガソリン暫定税率の年末廃止で合意=官房長官
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 5
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 9
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 7
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 8
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中