最新記事

リビア

カダフィの傭兵、報酬と意外な正体

国民にも軍にも見放されたカダフィが国外からかき集めている傭兵たちは何者なのか

2011年2月25日(金)18時17分
ステイトン・ボナー

狂犬吠える 国営テレビで演説し、殉教者としてリビアで死ぬと誓ったカダフィ(2月22日) Libyan State Television-Reuters

 拡大する反政府デモにあくまで抵抗し、「最後の血の1滴まで戦う」と宣言したリビアの独裁者ムアマル・カダフィ大佐。あっという間に国外から傭兵を集め、首都トリポリではフランス語を話す黄色い帽子をかぶった暗殺部隊が無防備な市民への銃撃を行っているらしい。それにしても、こうしたプロの傭兵を雇うにはいくらかかるのだろう?

 正確には分からないが、1日で1000〜2万ドルを稼ぐ傭兵もいるという。カダフィは少なくとも傭兵1人につき1000ドルの報酬を約束し、さらに入隊時にボーナスを支給していると、安全保障問題の専門家ジョン・パイクはみている。

 ゼー・サービシズ(09年にブラックウォーターから社名変更)のようなアメリカの民間軍事会社は、海軍や陸軍の特殊部隊出身者を雇うことが多く、イラク戦争当時はトップクラスだと報酬額は年20万ドルに上ったという。そこまでの特殊能力を備えていない兵士は、その1割かそれ以下だったようだ。

 現在リビアに集まっている傭兵は、おそらくスーダン西部ダルフールやチャド、ニジェールなどでカダフィの支援を受けてきた反政府勢力出身者が多い。混乱もなく着々と集まっている様子から、採用や移動、入国のプロセスはリビアの情報機関が監督していると考えられる。

性急な手配は孤立の裏返し

 たいがいの傭兵は20代で高校は出ておらず、正式な軍の訓練もほとんど受けていない。カダフィ政権が崩壊したら、生き残った者は仕事のあてもなく祖国へ帰ることになるだろう。

 カダフィが国外から傭兵を急いで呼び寄せたことは、彼が国内でいかに孤立しているかを示している。すでにリビア国軍の兵士の多くが、反政府勢力側についている。

 傭兵は市民を殺すのを躊躇しない。リビアに集まる傭兵の中には、アジアや東欧出身の者もいると噂されている。彼らにとっては、冷戦時代に培った技術を生かして手っ取り早く金を稼ぐチャンスというわけだ。

 でたらめかもしれない。しかし、内部告発サイト「ウィキリークス」が11月に公開したアメリカの外交公電に書かれていたように、カダフィは官能的な金髪のウクライナ人看護師を常に同伴するような人物。そんな彼の「人脈」はアフリカだけにとどまりはしないだろう。

Slate.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

リオ・ティントのスタウショーンCEOが年内退任、後

ワールド

米首都銃撃でイスラエル大使館員2人死亡、親パレスチ

ワールド

景気「緩やかに回復」維持、米関税リスク引き続き注視

ワールド

中国・オランダ外相が会談、グローバルな課題で協力深
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:関税の歴史学
特集:関税の歴史学
2025年5月27日号(5/20発売)

アメリカ史が語る「関税と恐慌」の連鎖反応。歴史の教訓にトランプと世界が学ぶとき

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドローン母船」の残念な欠点
  • 2
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界の生産量の70%以上を占める国はどこ?
  • 3
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 4
    人間に近い汎用人工知能(AGI)で中国は米国を既に抜…
  • 5
    コストコが「あの商品」に販売制限...消費者が殺到し…
  • 6
    「空腹」こそが「未来の医療」になる時代へ...「ファ…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「太陽光発電」を導入している国…
  • 8
    子育て世帯の年収平均値は、地域によってここまで違う
  • 9
    米国債デフォルトに怯えるトランプ......日本は交渉…
  • 10
    【クイズ】世界で2番目に「自動車の生産台数」が多い…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドローン母船」の残念な欠点
  • 4
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」…
  • 5
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 6
    コストコが「あの商品」に販売制限...消費者が殺到し…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「太陽光発電」を導入している国…
  • 8
    中ロが触手を伸ばす米領アリューシャン列島で「次の…
  • 9
    「空腹」こそが「未来の医療」になる時代へ...「ファ…
  • 10
    人間に近い汎用人工知能(AGI)で中国は米国を既に抜…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
  • 5
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 6
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中