最新記事

アフガニスタン

「機密流出」タリバンの復讐が始まった

内部告発サイト「ウィキリークス」に米軍協力者のリストが流出。タリバンの報復作戦にアフガン国民は戦々恐々

2010年8月4日(水)16時37分
ロン・モロー(イスラマバード支局長)、サミ・ユサフザイ(イスラマバード支局)

容赦なし 地元民による連合軍への密告にタリバンは怒りを募らせてきた(4月3日、燃え上がるドイツ軍の車両とタリバン兵士) Reuters

 7月25日、民間の内部告発サイト「ウィキリークス」に、アフガニスタン駐留米軍の機密文書が大量に流出すると、反政府武装勢力タリバンはすぐに反応した。文書の中に、米軍に密かに協力してきた地元民や村の名前が含まれていたからだ。

 タリバンの広報担当者はすかさず、タリバンを封じ込めようとするアフガニスタン当局とアメリカに「協力」したとされるすべてのアフガニスタン人を「罰する」という脅し文句を口にした。実際、この数日の彼らの動きを見ると、それが単なる脅しでないことがよくわかる。

 文書流出からわずか4日後、アフガニスタン南部の部族の長老らの自宅に暗殺予告が届きはじめた。先週末には、米軍と緊密に接触していたとされる長老カリファ・アブドラが、カンダハル州アルガンダブ地区の自宅から連れ去られ、タリバン兵士に銃殺された。

「5日以内にアフガニスタンを去れ」

 これは恐怖の報復作戦の序の口にすぎないのかもしれない。カンダハル州政府のアガ・ラリ副知事によれば、パンジワイ地区の長老70人にも脅迫状が届いたという。彼らの名前がウィキリークスの文書に含まれていたかどうかは不明だが、彼らが米軍やアフガニスタン政府への協力者だとタリバンが確信しているのは明らかだ。

 本誌記者が見た脅迫状には、手書きでこう記されていた。「お前の死を決定した。5日の猶予をやる。その間にアフガニスタンを去らなければ文句を言う権利はない」

 便箋には、タリバンの最高指導者ムハマド・オマルが率いた今はなき「アフガニスタン・イスラム首長国」の紋章が記されており、
タリバン幹部のアブドゥル・ラウフ・ハディムの署名もあった(ハディムはキューバのグアンタナモ米海軍基地に収容されていたが、昨年アフガニスタン当局に身柄を引き渡され、その後脱走した)。

 タリバンの広報担当者の脅し文句と長老アブドラの殺害、さらに大量の脅迫状という恐怖が重なったことで、アフガン政府やアメリカと親しくしてきた多くの国民がパニックに陥っていると、情報活動に従事するタリバン高官は語った(安全上の理由で匿名を希望)。彼によれば、この数日間、アフガニスタン南部や東部にある米軍と連合軍の基地に、保護や政治亡命を求めるアフガニスタン人が殺到しているという(米軍関係者はこの情報を確認していない)。

 さらにこの高官によれば、タリバンの英語メディア担当部署はウィキリークスに掲載された情報の検証を続けており、地元の司令官らが「殺害予定者リスト」を更新できるよう州ごとの「米軍協力者リスト」を作成しているという。

住民と連合軍の絆が断ち切られた?

 今回の情報流出を機に、アフガニスタン国民は連合軍への協力に一段と慎重になるのだろうか。当然ながら、前出のタリバン高官はそうなると考えている。「今回の一件はわれわれにはプラスだが、米軍への協力者には手痛い打撃だろう。アメリカはスパイを手厚く保護してくれない」と、彼は言う。

 敵側に付いた人間に対してタリバンが容赦ない報復をすることは、地元では昔からよく知られている。冷酷なゲリラ部隊に殺害された人は、数百人とまでは言わないが、膨大な数にのぼる。

 数カ月前には、アメリカに情報を流していたガズニ州の若者の一団がタリバンに捕えられ、そのうちの10人ほどが絞首刑にされるという悲惨な事件もあったという。また、村人がタリバン兵士の居場所を連合軍に知らせないよう、夜間は携帯電話の通信網が切断されている。

MAGAZINE

特集:間違いだらけのAI論

2018-12・18号(12/11発売)

AI信奉者が陥る「ソロー・パラドックスの罠」── 過大評価と盲信で見失う人工知能の未来とチャンス

人気ランキング

  • 1

    全長7mの巨大ヘビが女性を丸のみ インドネシア、被害続発する事情とは

  • 2

    自動運転車は「どの命を救うべきか」世界規模の思考実験によると...

  • 3

    ミャンマー若者世代、堕ちた偶像スー・チーに反旗

  • 4

    ソーセージで武装した極右がベジタリアンカフェを襲撃

  • 5

    「深圳すごい、日本負けた」の嘘──中国の日本人経営…

  • 6

    日本の次世代ロケット「H3」の打ち上げを支える新型…

  • 7

    「中国はクソ」 アリババにオワコンにされたドルチ…

  • 8

    中国当局がひた隠すスラム街の存在

  • 9

    Huaweiの頭脳ハイシリコンはクァルコムの愛弟子?

  • 10

    生きるために自分の足を噛みちぎった犬ルークの強さ

  • 1

    生きるために自分の足を噛みちぎった犬ルークの強さ

  • 2

    世界最小チワワ、韓国で49回クローンされ、世界で最も複製された犬に

  • 3

    全長7mの巨大ヘビが女性を丸のみ インドネシア、被害続発する事情とは

  • 4

    エイリアンはもう地球に来ているかもしれない──NASA…

  • 5

    フランス人の自信の秘密は「性教育」にあった!? 実…

  • 6

    韓国で隣家のコーギー犬を飼い主に食べさせようとし…

  • 7

    忍び寄る「大学倒産」危機 2000年以降すでに14校が…

  • 8

    自我のあるラブドールは作れる、だが人間は創造主に…

  • 9

    8メートルの巨大ニシキヘビ、漁師を締め上げ インド…

  • 10

    地球外生命が存在しにくい理由が明らかに――やはり、…

  • 1

    「人肉を食べ飽きた」呪術師らの公判で明らかになったおぞましい新事実

  • 2

    生きるために自分の足を噛みちぎった犬ルークの強さ

  • 3

    「売春島」三重県にあった日本最後の「桃源郷」はいま......

  • 4

    恋人を殺して食べたロシア人の男、詩で無罪を訴え

  • 5

    全長7mの巨大ヘビが女性を丸のみ インドネシア、…

  • 6

    カルロス・ゴーン逮捕、アメリカでどう報じられたか

  • 7

    フランス人の自信の秘密は「性教育」にあった!? 実…

  • 8

    日本がタイ版新幹線から手を引き始めた理由

  • 9

    世界最小チワワ、韓国で49回クローンされ、世界で最…

  • 10

    「深圳すごい、日本負けた」の嘘──中国の日本人経営…

資産運用特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
「ニューズウィーク日本版」編集記者を募集
デジタル/プリントメディア広告営業部員を募集
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版

ニューズウィーク日本版特別編集 レゴのすべて

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2018年12月
  • 2018年11月
  • 2018年10月
  • 2018年9月
  • 2018年8月
  • 2018年7月