最新記事

インド

ビルマ軍政のご機嫌取りを競う2大国

ビルマを舞台にした中国とインドの資源争奪戦で、西側の経済制裁は骨抜きに

2010年7月28日(水)16時17分
ジェレミー・カーン(ニューデリー)

 北朝鮮からスーダンまで、ならず者国家はたいてい中国と仲がいい。中国は民主主義国家ではないから、武器を売ったり石油を採掘できれば相手国の人権の問題は気に留めない。

 だが今回もろ手を挙げて世界で最も悪名の高い独裁者の1人を迎えたのは、中国でなく民主主義国家を自負するインド。7月25日に2度目の公式訪問としてニューデリーを訪れたビルマ(ミャンマー)のタン・シュエ国家平和発展評議会議長に対し、インド政府は武器を売却し、新たな資源取引契約を取り付けたとみられる。

天然ガスと引き換えに武器を売却

 両国はこれまで一貫して親密だったわけではない。インドはビルマからの難民を受け入れ、過去20年間のほとんどを自宅で軟禁されている民主活動家アウン・サン・スー・チーを支持してきた。ただインドが経済成長を維持するためには資源確保が必要で、ビルマには莫大な埋蔵量の天然ガスがある。インドは中国がすべてを買い占める前に取り分を確保したい。

 アメリカとEUは長期間にわたり、ビルマに経済制裁を科している。だがインドが中国同様にビルマ軍政を受け入れると、欧米の制裁は骨抜きになる。ビルマへの包囲網に加わるよう欧米が周辺国を説得できなければ、軍政が孤立を感じることはないだろう。

[2010年8月 4日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

NZ中銀、12月から住宅ローン規制緩和 物件価格低

ビジネス

先週以降、円安方向で急激な動き=為替で加藤財務相

ビジネス

ステランティス、第3四半期販売台数が13%増 7四

ワールド

ミャンマー総選挙、ASEANが監視団派遣を議論へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国EVと未来戦争
特集:中国EVと未来戦争
2025年10月14日号(10/ 7発売)

バッテリーやセンサーなど電気自動車の技術で今や世界をリードする中国が、戦争でもアメリカに勝つ日

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 2
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由とは?
  • 3
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃をめぐる大論争に発展
  • 4
    車道を一人「さまよう男児」、発見した運転手の「勇…
  • 5
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 6
    筋肉が目覚める「6つの動作」とは?...スピードを制…
  • 7
    連立離脱の公明党が高市自民党に感じた「かつてない…
  • 8
    1歳の息子の様子が「何かおかしい...」 母親が動画を…
  • 9
    ウィリアムとキャサリン、結婚前の「最高すぎる関係…
  • 10
    あなたの言葉遣い、「AI語」になっていませんか?...…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな飼い主との「イケイケなダンス」姿に涙と感動の声
  • 3
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 4
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    ロシア「影の船団」が動く──拿捕されたタンカーが示…
  • 7
    ベゾス妻 vs C・ロナウド婚約者、バチバチ「指輪対決…
  • 8
    ウクライナの英雄、ロシアの難敵──アゾフ旅団はなぜ…
  • 9
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 10
    トイレ練習中の2歳の娘が「被疑者」に...検察官の女…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に.…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中