最新記事

アフリカ

「W杯テロ」は新たな聖戦の始まりか

ウガンダでW杯観戦中の市民を狙った爆弾テロは、ソマリアのイスラム武装勢力「アルシャバブ」の犯行とみられ、さらに近隣諸国が襲われる可能性がある

2010年7月13日(火)15時41分
ケイティ・ポール

血の「報復」 W杯決勝戦を観戦中にテロの犠牲になった市民(7月11日、カンパラ) Benedicte Desrus-Reuters

 ウガンダの首都カンパラで11日夜、サッカーワールドカップ(W杯)の決勝戦を観戦していた市民を狙った2件の爆発事件が起こり、少なくとも74人が死亡し、70人以上が負傷した。ウガンダ警察は、国際テロ組織アルカイダと関連があるソマリアのイスラム反政府勢力「アルシャバブ」の仕業と見ている。事実ならば、アルシャバブがソマリア国外で実行した初めての攻撃となる。

 最初の爆発は、人気のバーやレストランが集中する地区にあるエチオピア料理店で起こった。直後に2回目の爆発が、多数のサッカーファンがW杯を観戦していたラグビークラブで起こった。両方とも多くの外国人が集まる場所で、アメリカ人1人をはじめ多くの犠牲者が外国人だった。

 ウガンダとブルンジの両国はアフリカ連合(AU)の平和維持部隊として合わせて5000人の兵士をソマリアに駐留させており、アルシャバブは両国を攻撃対象とすると繰り返し脅してきた。ウガンダはさらに、欧米諸国が支援するソマリア軍の兵士を訓練する場所にもなっている。

ブルンジとエチオピアも標的?

 事件の2日前には、ソマリアの首都モガディシュで行われた金曜礼拝で、アルシャバブの指揮官がウガンダとブルンジへの攻撃を示唆した。アルシャバブは、エチオピアに対しても強い憤りを持っている──理由は、06年にアメリカの後ろ盾の下で、エチオピア軍がソマリアの暫定政府を支援するため同国に侵攻したからだ。

 武装勢力の指揮官の1人はAP通信の取材に対して、攻撃への支持を表明。「ウガンダは我々の敵の1つ。奴らを泣かせることは我々を幸せにする。アラーの怒りが敵の上に降りかからんことを」。だが爆発の当事者であるかどうかについては、肯定も否定もしていない。

 一方事件後、アルカイダ系のウェブサイトで「アルシャバブの将軍」を名乗るシェイク・アブ・アルズベイルという人物が、犯行声明と見られる文章を投稿した。「ウガンダとブルンジの国民は、ソマリアの老若男女に対して両国軍が行った虐殺の報復を受けることになるだろう」

 米当局は長らく、ソマリアがアフガニスタンのように国際的に活動するイスラム過激派の潜伏拠点となることを懸念してきた。エチオピアの介入やアメリカの多額の資金援助にもかかわらず、ソマリアの暫定政府はモガディシュのわずか数ブロック区画しか支配できていない。そしてそのわずかな支配を守るためにも必死に戦わなければならないのが現状だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国万科の債券価格が下落、1年間の償還猶予要請報道

ビジネス

午前の日経平均は反発、大幅安の反動 ハイテク株の一

ワールド

イタリア製造業PMI、11月は節目の50超え 2年

ワールド

原油先物続伸、米・ベネズエラ緊張など地政学リスクで
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯終了、戦争で観光業打撃、福祉費用が削減へ
  • 2
    【クイズ】1位は北海道で圧倒的...日本で2番目に「カニの漁獲量」が多い県は?
  • 3
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果のある「食べ物」はどれ?
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 6
    中国の「かんしゃく外交」に日本は屈するな──冷静に…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    600人超死亡、400万人超が被災...東南アジアの豪雨の…
  • 9
    メーガン妃の写真が「ダイアナ妃のコスプレ」だと批…
  • 10
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 6
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    子どもより高齢者を優遇する政府...世代間格差は5倍…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中