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ツイッターはハイチを救えない

2010年1月26日(火)17時41分
ジョシュア・キーティング(フォーリン・ポリシー誌編集者)

情報提供というより記事の予告

 ツイッターのような新たなテクノロジーによって、個人が世の中に直接情報を発信できるようになるとよく言われる。だが実際には、ハイチ大地震で最もツイッターの恩恵を受けたのは、ツイッターから有用な情報を選び出すマンパワーをもった主要ニュースメディアや、寄付を集めたい基金と慈善団体、活動を宣伝したい政府機関だったようにみえる。

 どちらかといえば、ミュージシャンのリチャード・モールスやニューヨーク・タイムズ紙のデーミエン・ケーブのように心からハイチを支援したいと願っているユーザーを除けば、ニュースに値するつぶやきはごくわずかだ。しかも、そうしたつぶやきもニュースメディアとしてのツイッターの限界を露呈させるだけだ。

「海軍ヘリが大使館の上を回っている。追加の米軍もこちらへ向かっている。イラク、アフガニスタン、ハイチ。場所は違っても、すべて国家建設?」というケーブのつぶやきは、情報提供というよりも自身の記事の予告に近い。アメリカやヨーロッパの利用者にとって、「ポルトプランスのダウンタウンのこの店舗が略奪にあった」「ジャクメルのこのビルが倒壊した」というつぶやきは、ニューヨーク・タイムズやCNNの包括的な報道を待つよりも価値があるのだろうか。

 この20年間、ニュースのサイクルは新聞の一日単位から、ケーブルテレビやブログによる速報へ、そしてツイッターによるリアルタイムの実況へと変化してきた。

 ユーザーが理解できないほど超高速で情報が発信され、「ニュース」が情報提供の手段でなくなる日がついに来たのかもしれない。
 
Reprinted with permission from Foreign Policy, 26/01/2010. ©2010 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

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