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トルコ

オバマを救う中東の外交巧者エルドアン

2009年12月9日(水)18時05分
マーク・リンチ(米ジョージ・ワシントン大学准教授〔政治学〕)

 また、遠くから見るかぎり、イスラエルと距離を置く政策は、とくに昨年末のガザ侵攻以降、トルコ国民に広く支持されているが、トルコとイスラエルはこの数週間、関係を再構築したようにみえる。

オバマ外交にとって不可欠な存在

 トルコがイスラエル・アメリカ陣営とアラブ陣営の両方との良好な関係づくりを模索するのは、両陣営の因縁の対立に直接の利害関係がなく、外交上の影響力を最大化したい国にとっては至極まっとうな判断だ。そして、そうした国の存在は極めて有益な可能性を秘めている。

 実際、私はトルコこそオバマの外交政策にうってつけのプレーヤーだとまで言い切ってもいい。トルコなら自国の信用と国益を守りながら、深い溝に隔てられた両サイドと対話ができる。

 トルコなら、ほかのアラブ諸国には不可能な方法でシリアとイスラエルの対話を仲介できる(真偽は定かでないが、シリアがトルコに対してイスラエルとの関係を再構築して、再び仲介役を務めてほしいと促しているという噂を数週間前に耳にした)。またトルコなら、ほかのアラブ諸国には不可能なやり方で、イランとの溝を埋めることもできる。

 そんなわけで、私はエルドアンのワシントン滞在中に時間が取れなかったことを悔んでいる。トルコの外交政策は予測不可能で、事態を混乱させることもありえるし、長年の対立の橋渡しをすることもありえる。オバマは創造的かつ巧妙な外交を展開して、そうしたチャンスをうまく活用し、新秩序における強力な同盟関係を維持すべきだ。

Reprinted with permission from Marc Lynch's blog, 09/12/2009. © 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

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