最新記事

外交

インドをないがしろにするオバマの過ち

2009年11月25日(水)10時44分
ファリード・ザカリア(国際版編集長)

タリバン解体に役立たないパキスタン

 アフガニスタンのタリバンを作り出したパキスタンは、その解体のためには何一つ手を打っていない。今も、北西部の南ワジリスタンを拠点とするパキスタン・タリバンには攻撃をしているが、南西部バルチスタン州にいるアフガニスタン・タリバンの指導者には手出しをしていない。

 オバマ政権はまた、インドとのカシミール紛争にさえ片が付けば、パキスタンはこれまで長年支援してきたすべてのテロ組織に対し、突然攻撃を始めるだろうという考えを支持しているように見える。

 カシミールについて、インドの方がはるかに激しやすくなっているのは確かだ。だがカシミール紛争の解決は、パキスタンとインド間の信頼関係の構築なくしてありえない。昨年11月にインドのムンバイを襲った同時多発テロの首謀者とされるイスラム過激派組織、ラシュカレ・トイバの取り締りをパキスタンが拒否している現状では、それも望み薄だ。

 マクリスタルのような軍人は、どんなに頭が良くて豪胆でも政策を立案すべきではない。戦場の必要性に目を奪われて大きな視野を忘れがちだからだ。

 オバマが忘れてはならないのは、南アジアは失敗国家や機能不全国家のるつぼで、その中の唯一の例外がインドだということ。12億の人口をもつ巨大民主国家として長い歴史をもち、世界2番目の急成長を遂げる経済大国。アジアの覇を狙う中国を牽制できる立場にもあり、アメリカの自然な同盟国でもある。

 アメリカにとって最高の賞はインドとの関係であって、それに比べればアフガニスタン統治はブービー賞だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国テンセント、第1四半期は予想上回る6%増収 広

ワールド

ロシア大統領府人事、プーチン氏側近パトルシェフ氏を

ビジネス

米4月卸売物価、前月比+0.5%で予想以上に加速 

ビジネス

米関税引き上げ、中国が強い不満表明 「断固とした措
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 6

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 7

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    「人の臓器を揚げて食らう」人肉食受刑者らによる最…

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中