最新記事

国際政治

世界にはびこるアメリカ陰謀説

オバマの先週のガーナ訪問には邪悪な動機があった? 国際政治の出来事はすべてアメリカが裏で操っていると思い込む外国の学生たち

2009年7月14日(火)16時21分
ダニエル・ドレズナー(米タフツ大学フレッチャー法律外交大学院教授)

大統領の陰謀? オバマ大統領の車列を見物するガーナの人々(7月11日、ケープコースト) Jason Reed-Reuters

 実を言うと、先週の私のブログはアメリカ合衆国で製造されたものではない。ブログ執筆を海外にアウトソーシングしていた......といっても自分で書いたのだが。

 私はバルセロナ国際問題研究大学で米外交政策を教えていた。学生たちは本当に国際色豊かで、その出身国はスペイン、ドイツ、イギリス、アメリカ、中国、ベトナム、タイ、ガーナ、ケニア、トルコ、ベルギー、メキシコ、ニカラグア......教室の様子が目に浮かぶだろう。結構な役得だった。

 学生たちと話していてやや驚いたのは、彼らの多くが、米政府が国際政治のありとあらゆる出来事を操作していると思い込んでいることだった。皮肉なことだ。多くのアメリカ人がアメリカの覇権の将来を疑っているちょうどその時、他国の人々は米政府が悪魔のように裏で物事を操っていると信じ続けている。

 例えばガーナ人学生たちは、オバマが先週ガーナを訪れた理由を知りたがっていた。「民主的な統治を促進するため」という標準的な説明では納得しなかった。彼らは、もっと深い、もしかすると邪悪な動機があるはずだと確信していた。

 というわけで、私は「基本的な帰属の誤り」などといったことを指摘するために週の大半を費やすはめになった。でもうまくいったとは思えない。陰謀が存在すると確信している人々に対して(実際に存在するケースもあるが)、見たとおりの状況が時には現実そのものだと証明することは容易ではない。

 今後オバマ時代に反アメリカ主義がはびこるとしても、それには大統領やその発言、あるいは米政府の行動ですら関係がないのかもしれない。むしろ凝り固まった思考の癖によって、世界のあらゆる出来事の中心にアメリカがいると思えてしまうのかもしれない。残念なのは、アメリカが世界的な野心を縮小しなければならないまさにその時に、アメリカの力や目的に関する誇大な認識が根強く残っていることだ。

 ここで読者に質問。アメリカの力に関する誇大な認識をしぼませるにはどうしたらいいだろうか。

 追伸: 念のため付け加えると、私は国際情勢に関するこの種の陰謀説が非アメリカ人だけのものだと言うつもりはない。アメリカ人によるばかげた外国陰謀説の例は、ここをクリックすれば読める。

[米国東部時間2009年07月13日(月)8時39分更新]


Reprinted with permission from Daniel W. Drezner's blog, 14/7/2009. © 2009 by Washingtonpost.Newsweek Interactive, LLC.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀ピル氏、QEの国債保有「非常に低い水準」まで

ワールド

クラウドフレアで障害、数千人に影響 チャットGPT

ワールド

イスラエル首相、ガザからのハマス排除を呼びかけ 国

ビジネス

ユーロ圏銀行、資金調達の市場依存が危機時にリスク=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 9
    「日本人ファースト」「オーガニック右翼」というイ…
  • 10
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中