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ヒラリーはイラクから何も学んでいない

16年の大統領選に向けて「助走」を開始? だが外交でのタカ派姿勢が凶と出る可能性も

2014年7月4日(金)14時29分
ジャミル・ブイエ

タカ派 ヒラリーの強硬姿勢は特にリベラル派に受けが悪い Jonathan Ernst-Reuters

 07年のヒラリー・クリントンは翌年の大統領選に向けて、民主党の有力候補だった。だが02年秋のイラク開戦決議に賛成したことが民主党支持者の不興を買い、バラク・オバマに敗れるきっかけとなった。

 14年のヒラリー・クリントンは、はるかに有力な候補者だ。考えられる対立候補すべてをしのぐ影響力を持ち、民主党有権者から圧倒的な支持を得ている。

 今の彼女は、イラク問題についても「答え」を持っている。最近出版した回顧録『困難な選択(Hard Choices)』の中で、開戦支持は「明らかに間違いだった」と記述。インタビューでも、イラクで勢力を拡大している過激派に対処するため、地上軍を派遣することは「絶対にない」と明言した。

 だが、オバマ政権にいた頃のクリントンを思い返してみよう。「イラクでの戦争は支持すべきでない」ということ以外、イラク開戦決議から何一つ学んでいないのは明らかだ。

 国務長官時代のクリントンは、他国への介入について最も攻撃的な選択肢を支持してきた。

 アフガニスタンへの増派を支持し、ウサマ・ビンラディンの潜伏先を急襲するよう主張し、リビア介入を支持。シリア反政府勢力への武器供与を早い段階から擁護し、無人機を使った戦闘についても回顧録で擁護している。イラクに関しても、米軍の長期駐留を強く求めていた。

 クリントンの「問題」は、イメージと失言だとされている。例えば最近は、「きちんと税金を払っているのだから、裕福な自分が経済格差について語ってもおかしくはない」という趣旨の発言をし、「一般市民の気持ちなど分からない」と一部の民主党支持者から見なされた。

 だがそうした指摘は無意味だ。アメリカ国民はこれまでも、フランクリン・ルーズベルトやジョン・F・ケネディといった正真正銘の「特権階級」を大統領に選んできた。つまり、クリントンがいま何を言おうと大統領選に影響しない。投票直前まで失言を連発し続けても、景気さえ良ければ五分の勝ち目はある。

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