最新記事

NSA

米国際盗聴オペレーション、責任者の言い分

欧州の同盟国首脳からも総スカンを食らって米議会も法改正に動き出したが、「盗聴しない相手」で合意するのがせいぜいかも

2013年10月30日(水)18時14分
アレクサンダー・ベサント

市民感覚から乖離? 米下院で証言に立つキースNSA局長 Jonathan Ernst-Reuters

 米国家安全保障局(NSA)がヨーロッパを中心に米同盟国の政治指導者や一般市民を大規模に監視している――元CIA職員エドワード・スノーデンのリークを元にした相次ぐ報道が波紋を広げている。アンゲラ・メルケル独首相もNSAが盗聴した指導者35人の1人とされ、米独関係を「激しく揺さぶるものだ」と憤っている。

 こうした外国からの非難を受け29日、米議会はNSA高官たちを下院情報特別委員会の公聴会に召喚した。だがNSA局長のキース・アレグザンダー陸軍将軍は議員の激しい追求にもかかわらず、NSAの監視活動を擁護した。

「ヨーロッパ市民への監視はまったくない。でたらめだ」と否定し、ヨーロッパ諸国の情報機関と電話の(個人が特定されない)メタデータを共有しているだけだと述べた。

「矢面に立ってでも」アメリカをテロから守る情報収集活動に取り組むとし、「NSAは国際情報機関としての役割を果たしているだけだ」と、行き過ぎとの批判を一蹴した。「活動はすべて外国情報監視法(FISA)の業務記録に記録されており、合法だ」

 一方、議会はNSAに情報活動の権限を与えるFISAの改正を検討している。これまでスノーデン批判を繰り返してきた上院のダイアン・ファインスタイン情報特別委員会委員長は矛先をNSAに変え、「戦時など緊急時でもなければ、アメリカは同盟国の大統領や首相の電話やメールを監視すべきではない」と声明を出した(一般市民への監視については批判を避けたようだ)。

「こうした監視活動について議会に十分な情報提供がされてこなかった」とファインスタインは指摘し、NSAの監視活動を制限する立法へ動き出した。

 こうした批判に対し、アレグザンダーはこれまでも違法な情報収集は罰せられていることを挙げ、「責任は果たしている」ことを強調した。

 ジェームズ・クラッパー外国情報長官も証言に立ち、「NSAは正当な情報目的以外に誰も監視しておらず、法は犯していない」と組織的関与を否定。これまでの違反行為については単なる人的ミスと主張した。さらに「指導者の意図を分析することはNSAの活動の基本中の基本のようなもの」と言った。

 バラク・オバマ米大統領がこうした監視を知っていたとされる疑惑についてNSA高官たちは否定している。ニューヨークタイムズ紙によれば、オバマがNSAに同盟国指導者への監視活動禁止命令を発する予定だという。

 遅きに失したとはいえ、NSAの野放図な監視活動に対してアメリカはようやく歯止めをかけることになる。

From GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国大統領、1月4ー7日に訪中 習主席とサプライチ

ビジネス

米シティ、ロシア部門売却を取締役会が承認 損失12

ワールド

マレーシア野党連合、ヤシン元首相がトップ辞任へ

ビジネス

東京株式市場・大引け=続落、5万円台維持 年末株価
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 5
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 6
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 7
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 8
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中