最新記事

米外交

米大統領選、中国バッシングで得点稼ぎ

第2回討論会で目立ったのはオバマとロムニーの中国叩き合戦。中国は意外に冷静だが

2012年10月19日(金)18時30分
ベンジャミン・カールソン

いざ舌戦 中国を悪者にするのが外交戦略? Jim Young-Reuters

 投票までもう1カ月もないアメリカ大統領選。先日、オバマ大統領とミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事の第2回討論会が行われたが、その内容にイラついた中国人は多いはずだ。

 約1時間半に及んだ討論会で、2人の候補は「中国」という言葉を何と24回も発した。(重要な争点であるはずの「医療制度」よりも多かった)。しかも中国について語るときは一様に否定的なトーンだった。
 
 オバマはいつものようにロムニーの中国企業への投資に触れ、雇用が国外に流出していると攻撃した。「ロムニー前州知事が中国に強硬なそぶりを見せるとき、忘れてはいけないことがある。彼は、中国へのアウトソーシングの先駆者ともいうべき企業に投資していたということ、そして現在は中国政府のために監視技術を開発している企業に投資している。中国の民衆をスパイするための技術だ」

 ロムニーも負けじと、オバマの任期中に中国が製造業の生産高でアメリカを抜いて世界一になったと攻撃。中国への投資についてもすぐさま反撃に出た。「大統領は自分が加入している年金の運用報告書を見たことがありますか。あなたも中国企業に投資していることがわかるはずだ」

中国人は意外と冷めた目で

 さて、地球の反対側でこの討論会を見ていた中国人はどう思ったのだろうか? 中国版ツイッターの新浪微博(シンランウェイボー)では、予想通り多くのユーザーが、自分たちの国が何かにつけて米大統領選の攻撃のエサに使われていることに気分を害していた。

「ロムニーの中国バッシングは大きな間違いだ」とツイートしたユーザーはこう続けた。「アメリカ人は友好的な中米関係を築きたいが、中国がアメリカより強力な国になるのは嫌なのだ」

 しかし興味深いのは、討論会での中国バッシングを淡々と受け流している中国人が結構いたことだ。反中国的なレトリックが何カ月も続いているため免疫力ができたからなのか、真に受けるのも馬鹿らしいと思っているからなのか、とにかく多くの中国人が(アメリカ人と同様に)、第1回討論会とは生まれ変わったように元気な姿を見せたオバマに注目した。

 第1回討論会で見せた意気消沈した陰気な表情が「明るくなった」、「オバマがついに攻撃に出た!」などと、多くの中国人がツイートして喜んだ。

 一方のロムニーは散々な言われようだった。オバマの年金に対する「ロムニーの突っ込みは甘い」とか「ロムニーには良心がないのか」といった感じだ。

 中間所得層や平等のために戦うオバマに対し、ロムニーは「富裕層を代弁し、弱者が食い物にされても何とも思わない」とまでツイートした中国人も。「もし私がアメリカ国民なら、オバマを支持する!」

 国営の新華社通信まで、中国が論戦のネタにされることには慣れっこで、もはや腹を立てる気もないようだ。「いまさら驚きでも何でもないが、(討論会は)中国嫌いたちの見栄張り合戦と化したようだ」と報道。「大統領候補たちは票を得るために中国非難をしているが、度を超えないよう注意すべきだ」と、やんわり警告した。

 もちろん、繰り返し中国を叩いたことのツケは払わないといけない。新華社通信の論説はこうクギを刺した。「この日和見主義な(アメリカの)政治家たちが中米関係に負わせた傷は、放っておけば治癒するようなものではない」

GlobalPost.com特約

ニュース速報

ワールド

英首相に早期辞任圧力、離脱協定案巡り与党内で強い反

MAGAZINE

特集:ニュースを読み解く 哲学超入門

2019-5・28号(5/21発売)

トランプ現象、移民、監視社会、SNS...... AIも解答不能な難問にあの思想家ならこう答える

人気ランキング

  • 1

    日本の正社員の給与の約半分は40~50代前半の社員に支払われている

  • 2

    アメリカの衛星が捉えた金正恩「深刻な事態」の証拠写真

  • 3

    パリで過熱する日本ブーム 300万人が訪れた「ジャポニスム2018」の立役者たち

  • 4

    利他の心に立つ稲盛和夫が活用する京都の日本庭園「…

  • 5

    日本人の英語が上手くならない理由 『日本人の英語…

  • 6

    女性の体は、弱い精子をブロックする驚くほど洗練さ…

  • 7

    京都を愛したデヴィッド・ボウイが涙した正伝寺の日…

  • 8

    ロシア爆撃機がアラスカに接近、米戦闘機がインター…

  • 9

    「作り物」のクイーン賛歌は、結局本物にはかなわない

  • 10

    「ディズニーパークに遺灰がまかれている」という都…

  • 1

    29年前の「女子高校生コンクリート詰め殺人事件」の容疑者が再犯 少年法見直しの議論は海外にも 

  • 2

    「人肉は食べ飽きた」と自首した男と、とんでもない「仲間」たち

  • 3

    「売春島」三重県にあった日本最後の「桃源郷」はいま......

  • 4

    アメリカがイランを攻撃できない理由──「イラク侵攻…

  • 5

    ジョンベネ殺害事件で、遂に真犯人が殺害を自供か?

  • 6

    女性の体は、弱い精子をブロックする驚くほど洗練さ…

  • 7

    現代だからこそ! 5歳で迷子になった女性が13年経て…

  • 8

    元TBSアナ久保田智子:不良だった私が東大に入るまで

  • 9

    トランプの言うことは正しい

  • 10

    日本の正社員の給与の約半分は40~50代前半の社員に…

  • 1

    徴用工問題で日韓が近づく危険な限界点

  • 2

    「英王室はそれでも黒人プリンセスを認めない」

  • 3

    全長7mの巨大ヘビが女性を丸のみ インドネシア、被害続発する事情とは

  • 4

    29年前の「女子高校生コンクリート詰め殺人事件」の…

  • 5

    59歳の人気ランジェリーモデルは5年前まで普通のお母…

  • 6

    「売春島」三重県にあった日本最後の「桃源郷」はい…

  • 7

    現代だからこそ! 5歳で迷子になった女性が13年経て…

  • 8

    金正恩の「最愛の妹」身辺に異変か......「米朝決裂…

  • 9

    地下5キロメートルで「巨大な生物圏」が発見される

  • 10

    10%の食塩水1kg作るのに必要な塩と水は? 大学生が「%…

PICTURE POWER

レンズがとらえた地球のひと・すがた・みらい

英会話特集 資産運用特集 グローバル人材を目指す Newsweek 日本版を読みながらグローバルトレンドを学ぶ
日本再発見 シーズン2
広告営業部員ほか求人情報
定期購読
期間限定、アップルNewsstandで30日間の無料トライアル実施中!
メールマガジン登録
CHALLENGING INNOVATOR
売り切れのないDigital版はこちら

MOOK

ニューズウィーク日本版別冊

絶賛発売中!

STORIES ARCHIVE

  • 2019年5月
  • 2019年4月
  • 2019年3月
  • 2019年2月
  • 2019年1月
  • 2018年12月