最新記事

アメリカ社会

米下院議員を銃撃した男の心の闇

2011年1月11日(火)15時17分
イブ・コナント、クレア・マーティン

犯罪ドラマの見すぎが遠因?

 ミラーはラフナーから連絡を受けたことはないが、「彼は私のサイトを見たと思う」とコメント。「彼は私が過去11年間、サイトで書いてきたことを繰り返しているだけだ」

 ミラーに言わせれば、ラフナーは空軍のマインドコントロール計画の犠牲者かもしれない(99年のコロンバイン高校銃乱射事件の犯人たちと同様に「計画に参加するのに十分な年齢に達していた」からだとか)。ただし、ラフナーに最も影響を与えたのはテレビの犯罪ドラマだともいう。「犯罪ドラマは連日、一週間に100回も殺人について教えている。彼らは20年間に渡って子供たちを洗脳してきた。狂っていない人がいるほうが驚きだ」

 ジョージ・オーウェルやヒトラーの『我が闘争』を含むラフナーの愛読書リストを調べたポトクは、すべての作品に反政府的な要素が貫かれていると指摘する。さらに、「良心的な空想すること(conscience dream)が好きだ」というラフナーの記述は「意識的な空想(conscious dreaming)」のスペルミスの可能性があり、そうだとすればイギリスの陰謀論者デービッド・アイクが主張してきたことと合致するという。「意識的な空想という概念は理解できないが、要は我々が現実だと思っているものは勘違いだ、という考え方だ」と、ポトクは言う。

 ラフナーがこの思想を信奉していたとすれば、『不思議の国のアリス』などのファンタジーが愛読書リストに含まれていたのも理解できる。「精神疾患をかかえた男が痛烈な言葉を大量に耳にするうちに、一部を信じ込んでしまった可能性が高い」と、ポトクは言う。

 結局、精神疾患に政治的な怒りが入り混じったために、一線を越えて凶行に走ったということなのだろうか。「私が入手した情報や、彼の投稿に表れている怒りと被害妄想から判断するかぎり、彼は妄想様観念か偏執性妄想を患っていたように思える」と語るのは、ギフォーズと親交がある医師でアリゾナ州下院議員のマット・ハインズ(33)。「偏執性妄想の患者はこの州の厳しい政治状況に、普通とは異なる反応をする。『医療制度に関するあなたの考え方に反対です』と言う代わりに、『お前は死ね』となる」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マスク氏、第3政党始動計画にブレーキ=WSJ

ワールド

米大豆農家、中国との購入契約要請 トランプ氏に書簡

ワールド

韓国は「二重人格」と北朝鮮の金与正氏、米韓軍事演習

ワールド

トランプ政権、ワシントン検事局に逮捕者のより積極的
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人」だった...母親によるビフォーアフター画像にSNS驚愕
  • 3
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家のプールを占拠する「巨大な黒いシルエット」にネット戦慄
  • 4
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 5
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 6
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 7
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 8
    【クイズ】沖縄にも生息、人を襲うことも...「最恐の…
  • 9
    時速600キロ、中国の超高速リニアが直面する課題「ト…
  • 10
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 4
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コ…
  • 5
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 6
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 7
    「死ぬほど怖い」「気づかず飛び込んでたら...」家の…
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 10
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 10
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中