最新記事

テロ

アルカイダの新たな標的は欧州じゃない

2010年10月18日(月)18時19分
クリストファー・ディッキー(中東総局長)

「(シディキは)イスラム過激派の間でロックスター顔負けの人気者になっている」と、前出の友人は言う。「アメリカが『対イスラム戦争』に乗り出している新たな証拠と見なされている。アメリカはとうとうイスラム女性まで攻撃し始めたというわけだ」

米当局の想定外だったNYテロ未遂

 アメリカ本土にテロの脅威が差し迫っている最も顕著な証拠は、この5月にニューヨークのタイムズスクエアで起きた自動車爆弾テロ未遂事件だ。実行犯のファイサル・シャザドをテロリストとして訓練したのは、パキスタンで活動するタリバンの一派。アメリカの情報機関は、タリバンが地元を遠く離れたアメリカでこれほど大胆な行動に出るとはまったく想定していなかった(シャザドは10月初めにアメリカの裁判所で終身刑を言い渡された)。

 この1年で大きく注目されるようになったアルカイダ系の新しいリーダーたちも何人かいる。シャザドをタイムズスクエアに送り込んだパキスタン・タリバン運動の指導者ハキムラ・メフスードや、09年12月のクリスマスに起きた旅客機爆破テロ未遂の糸を引いたとされるイエメンのイスラム過激派指導者アンワル・アル・アウラキなどは、よく知られている。

 パキスタンを拠点に活動しているイリヤス・カシミリは、知名度こそ劣るが、危険性ではメフスードやアウラキに負けていない。インドで数々のテロを実行したことで知られるカシミリは、ヨーロッパの都市で同時爆破テロを実行する計画に関わっているとされる。イギリスのデイリー・テレグラフ紙が先頃報じたところによれば、カシミリはイギリスとドイツに既に工作員のチームを送り込んでいると仲間に語ったという。

 しかし、カシミリの最大の標的はヨーロッパではない。「最大の戦いは大サタンとの戦い」だと、09年にカシミリはパキスタンのジャーナリストに語っている。本命はあくまでもアメリカ----その事実は、9・11テロから9年あまりが過ぎた今も変わっていないようだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

金総書記、プーチン氏に新年メッセージ 朝ロ同盟を称

ワールド

タイとカンボジアが停戦で合意、72時間 紛争再燃に

ワールド

アングル:求人詐欺で戦場へ、ロシアの戦争に駆り出さ

ワールド

ロシアがキーウを大規模攻撃=ウクライナ当局
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 7
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中