「紀元60年頃の夫婦の暮らし」すらありありと...最新技術でこんなに変わった「考古学」の現場風景

The Past Is Closer Now

2025年3月13日(木)16時45分
コリン・ジョイス(在英ジャーナリスト、本誌コラムニスト)
イングランド南部のウッドヘンジ。デンマークで最近発見された環状木柱列はこの遺跡と明確な類似点があるという

イングランド南部のウッドヘンジ。デンマークで最近発見された環状木柱列はこの遺跡と明確な類似点があるという THE WALKER/GETTY IMAGES

<「考古学=発掘」のイメージはもう古い?AI、3Dマッピング、地中レーダー探査にDNA解析──新しい技術が人類史の深部を見せてくれる時代が来た>

腰をかがめて土を払い、陶器の破片を見つけて、それを光にかざす......。典型的な考古学者のイメージは、そんな地味なものだろう。だが、実際はかなり違う。現代の考古学は、解剖学や生化学、あるいは建設業までも連想させるような、途方に暮れるほど多様な分野の組み合わせだ。

確かに考古学者は、まだフィールドワークをしている。しかし彼らの仕事をイメージするなら、研究室で働く姿やコンピューターでデータベースを検索している姿、病院でCTスキャナーを借りている姿を思い描くべきだ。彼らの武器は昔ながらの「こて」とブラシより、AI(人工知能)や3Dマッピング、地中レーダー探査、有機残留物分析である。


そして、DNA解析の進化がある。これによって私たちは、人類の物語の最も深い過去をのぞき見ることができる。考古学者は劣化したDNAを含む小さな骨片からでも、研究を行えるようになった。「パターンマッチング技術とコンピューターの処理能力の向上により、非常に断片化したDNAのピースも組み合わせることができる」と、カタール博物館局の考古学者ロブ・カーターは言う。

こうして「アフリカ起源説」(現代の全ての人間はアフリカの初期人類の子孫だとする説)が確認されたばかりか、さらに詳細が加えられた。いわゆる「大移動」(8万〜6万年前)の段階、海と陸のルートの詳細、絶滅したネアンデルタール人やあまり知られていないデニソワ人とホモサピエンスとが交配した証拠、そしてアフリカのさまざまな地域に残った人間の集団間の交流に関する興味深い詳細などが分かってきた。

東京アメリカンクラブ
一夜だけ、会員制クラブの扉が開いた──東京アメリカンクラブ「バンケットショーケース」で出会う、理想のパーティー
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

ドイツ銀、28年にROE13%超目標 中期経営計画

ビジネス

米建設支出、8月は前月比0.2%増 7月から予想外

ビジネス

カナダCPI、10月は前年比+2.2%に鈍化 ガソ

ワールド

EU、ウクライナ支援で3案提示 欧州委員長「組み合
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 8
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 9
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 10
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中