最新記事
宇宙

ispaceの月面探査機、民間初の月面着陸ならず 燃料切れで墜落

2023年4月26日(水)12時25分
ロイター
日本の宇宙ベンチャーispaceの月探査機

日本の宇宙ベンチャーispace(アイスペース) は25日、民間初の月面着陸を試みた探査機との通信が予定時間を過ぎても確立できておらず、失敗した可能性があると発表した。東京で撮影(2023年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

日本の宇宙ベンチャーispace(アイスペース)が26日未明に民間企業として初めて挑んだ月面着陸は失敗した。昨年12月の打ち上げから約4カ月、着陸態勢に入りながらも最後は燃料が切れ、自由落下して月面に衝突したと同社はみている。

アイスペースは26日朝、月面着陸を「達成することができないと判断した」と発表した。着陸船が月面に対して垂直になったことは確認したが、予定時刻を過ぎても着陸を示すデータを取得できなかった。燃料の推定残量がなくなった上、落下速度がデータ上で加速、通信が途絶えたため、「最終的に月面へハードランディングした可能性が高い」としている。

袴田武史・最高経営責任者(CEO)は26日午前に会見し、「着陸する直前までデータを獲得できたことは大きな達成と考えている」とした上で、次回以降のミッションに向けて「着陸の成熟度を上げる作業ができる」と語った。高度の計測に何らかの問題があったことが原因の一つとみている。

着陸船は月面から90メートルの地点まで接近した後、日本時間26日午前1時40分ごろ自律着陸する予定だった。宇宙航空研究開発機構(JAXA)とタカラトミー、ソニーグループ、同志社大学が共同開発した超小型自走ロボットや日本特殊陶業の固体電池など7つの荷物を積み、安定した通信と電力供給を確立するとともに、搭載機器の運用能力を実証する計画だった。

着陸後のデータ送信を条件に、一部取引先から最大約1億600万円の売り上げが入る予定だったが、計上できない可能性がある。2024年3月期の業績予想への影響は軽微だという。月面着陸を達成できなかったことで、保険金を受け取る可能性がある。

同社は今月12日に東京株式市場へ上場したばかり。今回の結果を受けて同社株は朝から売り気配が続いている。約2週間で2倍超上昇してきたため、一転して利益確定の売りが出ている。袴田CEOは 「非常に大きな期待をもらっていた。ミッション2、3をしっかり実行して事業性をしっかり築いていくことが何より重要と考えている」と述べた。

今回は同社の月探査計画「HAKUTO-R」の初回ミッションだった。着陸船は昨年12月、米民間企業スペースXのロケットで米フロリダ州から打ち上げられ、今年3月に月を周回する軌道に入っていた。24年に予定する2回目は月面探査車の走行性などを検証し、25年の3回目は米航空宇宙局(NASA)の有人月探査計画「アルテミス」にも関わる計画にしている。

会見に同席した野崎順平・最高財務責任者(CFO)は資金繰りへの影響を問われ、2回目、3回目のミッションは上場時に調達した資金と売り上げで賄えるとの見通しを示した。追加の投資や研究開発には、新たな資金調達が必要になるとした。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米CB景気先行指数、8月は予想上回る0.5%低下 

ワールド

イスラエル、レバノン南部のヒズボラ拠点を空爆

ワールド

米英首脳、両国間の投資拡大を歓迎 「特別な関係」の

ワールド

トランプ氏、パレスチナ国家承認巡り「英と見解相違」
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 9
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中