超加工食品 脳の快感回路に作用する危険性を、欧米科学者が警告

KILLED BY FAKE FOOD

2022年1月31日(月)11時05分
アダム・ピョーレ(ジャーナリスト)

220201P18_KKS_04vert.jpg

DAVID CROCKETTーMOMENT/GETTY IMAGES

多くの研究者は、範囲が広すぎるとしてモンテイロの分類法に反対している。

実際、「超加工食品」のカテゴリーには実にさまざまな栄養価の多種多様な製品が含まれる。カップケーキやコーンチップ、ダイエットソーダと、本物の鶏の胸肉にブドウ糖、砂糖、イエローコーン粉などを加えたものや、本物の牛肉と豆、つぶしたトマトに大豆粉、着色料を加えた製品など、タンパク質を多く含む食品が一緒くたに同居している。

しかし、モンテイロが食品の加工レベルを示す新しいカテゴリーを定義したことで、公衆衛生や疫学の専門家は食品加工のメカニズムや健康問題との関連を議論するための枠組みを手に入れた。

超加工食品がどのように肥満を招くのか、何千もの化学物質や添加物、栄養素のどれが健康を悪化させるのか、科学者たちはまだ解明できていない。

だが、食品メーカーを動かした市場の力は明らかだ。

肥満と代謝性疾患が急増し始めた1980~2000年、平均的なアメリカ人が摂取可能なカロリー量は1日約3200キロカロリーから4000キロカロリーに増加。その結果、消費者の関心と胃袋をめぐる業者間の競争が一気に激化した。

「至福ポイント」を徹底活用

一方、80年代には「もの言う株主」が食品会社への圧力を強め、株価を上げるため四半期ごとの収益を伸ばすよう要求した。

こうして食品業界では、製品開発とマーケティングの「軍拡競争」が繰り広げられた。

「食品を売って利益を得たいなら、消費者に他社ではなく自社の製品を買わせるか、消費者全体の食べる量を増やすしかない」と、ニューヨーク大学のネスルは指摘する。

自社製品をもっと売るために、食品会社は書店や衣料品店、ドラッグストア、ガソリンスタンドにも商品を置いた。シリアルを多く売るために1粒のサイズを大きくし、より多くの漫画キャラクターを登場させた。

企業に雇われた多数の科学者は、もっと多くの食品を売るための独創的なマーケティング手法と科学的イノベーションを考案した。

ジャーナリストのマイケル・モスは、2013年に出版した『フードトラップ 食品に仕掛けられた至福の罠』(邦訳・日経BP社)の1章を割いて、ハワード・モスコウィッツを紹介している。

消費者が最も強い欲求を感じるように食品を「最適化」するために、高等数学とコンピューター科学を駆使して先駆的研究を行った食品業界のスターだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

シンガポール航空機、乱気流で緊急着陸 乗客1人死亡

ビジネス

アストラゼネカ、30年までに売上高800億ドル 2

ビジネス

正のインフレ率での賃金・物価上昇、政策余地広がる=

ビジネス

IMF、英国の総選挙前減税に警鐘 成長予想は引き上
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    9年前と今で何も変わらない...ゼンデイヤの「卒アル写真」が拡散、高校生ばなれした「美しさ」だと話題に

  • 4

    服着てる? ブルックス・ネイダーの「ほぼ丸見え」ネ…

  • 5

    「目を閉じれば雨の音...」テントにたかる「害虫」の…

  • 6

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 7

    高速鉄道熱に沸くアメリカ、先行する中国を追う──新…

  • 8

    中国・ロシアのスパイとして法廷に立つ「愛国者」──…

  • 9

    「韓国は詐欺大国」の事情とは

  • 10

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 10

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中