最新記事

仮想通貨

高利回りで人気の分散型金融「DeFi」、本当にリスクに見合う運用法なのか

2021年9月3日(金)20時13分
千野剛司(クラーケン・ジャパン代表)

ではどのようにそのようなリスクを測るのでしょうか?ビットコインとWBTCの価格の差異に注目することで、WBTCのリスクを分析ができるでしょう。

ビットコインに対するWBTCの価格プレミアム

210903kr_df01.png

(出典:Kraken Intelligence)

ビットコインとWBTCの価格差は-1.9%〜6.9% と振れ幅がありますが、30日間の平均は0.24%です。このため、WBTCのリスク・プレミアムは0.24%と考えることができるでしょう。

先ほどと同様、著名DeFiレンディングであるコンパウンド(COMP)とアーヴェ(Aave)、FulcrumにWBTCを預けた場合の年利をみてみましょう。それぞれ、0.06%、0.19%、8.74%です。WBTCのリスク・プレミアムが0.24%であるため、Fulcrum以外はリスクがリターンを上回る計算になります。

スマートコントラクト・リスク

次に、DeFiサービス提供に必要なプラットフォームにはどんなリスクがあるのかみてみましょう。まずはDeFiに欠かせないスマートコントラクトの脆弱性を標的にする外部からの攻撃リスクです。

スマートコントラクトは、ブロックチェーン上であらかじめ決められた契約を自動的に実行するもので、仲介者のいないP2P(個人間)の取引が前提となっているDeFiにとっては必要不可欠な仕組みです。コードの設定ミスやバグといったスマートコントラクトの欠陥によって、DeFiに預けられた巨額の資金が流出する事件は後を絶ちません。

2020年にDeFiの脆弱性をついた攻撃によって喪失した資金は、約8600万ドルと言われています。これは当時のDeFi預け入れ資産147億ドルの約0.58%に相当します。伝統的な金融業界とは異なり、こうした脆弱性に対する保険制度は整備されていません。

カウンターパーティー・リスク

次は、取引相手としてのプラットフォーム側の信頼性について考えてみましょう。一つの方法は、二つ以上のプラットフォームで特定の仮想通貨の価格を比較することです。例えば、2016年8月にDDoS攻撃を受けた仮想通貨取引所ビットフィネックスと同時期のクラーケンにおけるビットコイン価格を比較してみましょう。

ビットフィネックス:DDoS攻撃時のトレーディング停止とビットコイン価格

210921kr_de04.png

(出典:Kraken Intelligence)

トレード再開時のビットコイン価格比較 クラーケン(赤)とビットフィネックス(青)

210921kr_de05.png

(出典:Kraken Intelligence)

2016年8月2日、DDoS攻撃によってビットフィネックスは1万2000BTCを盗まれました。ビットコイン価格は下落し、ビットフィネックスはトレーディングを2、3日停止しました。

ハッキング攻撃があった日、取引終了時にビットフィネックスとクラーケンのビットコイン価格には11.8%の違いがありました。その日一日を通してみますと、二つの取引所の価格差のレンジは0.6%〜28.4%。このパーセンテージは、不透明な時期におけるプラットフォームに対する信頼値を示しており、プラットフォームに対するリスク・プレミアムと考えられるでしょう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

25年全国基準地価は+1.5%、4年連続上昇 大都

ビジネス

豪年金基金、為替ヘッジ拡大を 海外投資増で=中銀副

ビジネス

トランプ氏、NYタイムズ提訴 名誉毀損で150億ド

ワールド

米カタール、防衛協力強化協定とりまとめ近いとルビオ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェイン・ジョンソンの、あまりの「激やせぶり」にネット騒然
  • 3
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く締まった体幹は「横」で決まる【レッグレイズ編】
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 6
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 7
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 8
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    「この歩き方はおかしい?」幼い娘の様子に違和感...…
  • 1
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 2
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 3
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 4
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 5
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 6
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 7
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    埼玉県川口市で取材した『おどろきの「クルド人問題…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中