最新記事

台湾

某ティッシュ会社の実態も暴いた、企業の環境汚染履歴が丸わかりのアプリ

2020年10月2日(金)13時05分
近藤弥生子 ※Pen Onlineより転載

Android版(無料でダウンロード可能)は、発売後約3カ月でおよそ3500ダウンロードを突破。ただし、このアプリの支持者の7割ほどがiPhoneユーザーのため使用することができず、現在開発中のiOS版に期待が高まっている。写真提供:綠色公民行動連盟

消費活動が元に戻ってきた台湾で、ちょっとびっくりするようなアプリがリリースされた。その名も「掃了再買(スキャンしてから買おうという意味)」。スーパーやコンビニに並ぶ商品のバーコードをスキャンするだけで、そのメーカーの環境汚染加担度、違反履歴、罰金の支払いの有無、その累計金額がわかってしまう。食品や日用品を中心に、登録されている商品データは既に5000を超える。

特に話題になったのが、100%再生紙由来でエコを売りにしているティッシュの製造元が、実は他のメーカーと比較してもダントツで環境汚染をしている企業だった、というニュースだ。空気汚染、水質汚染、廃棄物処理などの罰金の回数は127回、総額で約4,997万元(日本円で約1億9,988万円)にも上る。少し高いけれど環境のために、と筆者も買い続けていたものだったので、衝撃的だった。

<参考記事>古代神殿をコンセプトにした、"水に浮かぶアップルストア"がついにオープン

企業側から履歴の表示をやめてほしいと言われるかなど気になるが、アプリ開発元の綠色公民行動連盟(Green Citizens' Action Alliance)の副秘書長・曾虹文によれば、そういったことはまったくないそう。「間違ったやり方をしている企業を倒産に追い込むのではなく、改善を促すのが私たちの目的です。一般的に環境団体といえば、企業と対立して対話ができないことが多いですが、私たちはオープンデータを元に企業と民衆、そして政府との間で対話ができています」と話す。

「ティッシュの乱」と呼ばれたこの騒動も、現在は企業側が少しずつ状況を改善していることで落ち着きをみせているという。社会的影響力をもつ綠色公民行動連盟は20年続くNPO団体で、企業や政府からは資金を受け取らない。すべて民衆からの寄付で活動が成り立っている。「政府や企業ができない役割は、自分たちが埋めないと」という姿がまぶしく目に映った。

※1元(ニュー台湾ドル)=約4円(2020年8月現在)

<参考記事>その名も「振興三倍券」で、台湾に国内旅行ブームが到来。

pen20200928taiwanapp-2.jpg

商品をスキャンするとこのような表示が。赤字は、規則違反の回数と罰金の累計を示している。アプリでは、パッケージデザインやメーカーのブランディングに踊らされず、その企業が環境汚染に加担していないかを確認してから消費すべきだと訴える。写真提供:綠色公民行動連盟

※2020.08.14

※当記事は「Pen Online」からの転載記事です。
Penonline_logo200.jpg



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマーで総選挙投票開始、国軍系政党の勝利濃厚 

ワールド

米、中国の米企業制裁「強く反対」、台湾への圧力停止

ワールド

中国外相、タイ・カンボジア外相と会談へ 停戦合意を

ワールド

アングル:中国企業、希少木材や高級茶をトークン化 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌や電池の検査、石油探索、セキュリティゲートなど応用範囲は広大
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 9
    【クイズ】世界で最も1人当たりの「ワイン消費量」が…
  • 10
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中