最新記事

コロナ特効薬を探せ

政府はなぜ遅い? コロナ対策には起業家的アプローチが必要だ

TIME FOR THE “ENTREPRENEUR-IN-CHIEF”

2020年5月21日(木)17時05分
ジェフ・ウェッブ(起業家、バーシティー・ブランズ創業者)

ILLUSTRATION BY SORBETTO/ISTOCK

<プロセスより結果、スピードが重視されるべき状況下にあって、ウイルスの封じ込め、検査、治療の3本柱の対応がもたついたのはなぜか。疫学者ではなく、経営者として提言するとすれば──。本誌「コロナ特効薬を探せ」特集より>

私がスポーツブランド、バーシティー・ブランズのCEOを務めていた頃、何度も繰り返していた言葉は「よりよく、より速く」だった。その言葉は社員にとって大きな意味があった。常に物事を改善するために努力すること、そして迅速に対応すべきことを思い出させたのだ。そのアプローチがあったからこそ、40年間の成功があった。

20200526issue_cover200.jpg疫学者ではなく、経営者としてアメリカ政府の新型コロナウイルス対策を見たとき、私が懸念を抱いたのはこの点だった。4月初め、新型コロナウイルスとの戦いにいくつか進展があった。政府が感染の封じ込め、検査、治療の3つの分野で行動を起こしたのだ。一歩前進したと言える。問題は、なぜよりよく、より速くできなかったのかということだ。

新型コロナウイルスが国家と人々の健康と経済に与えたダメージに関して解決すべき問題は2つある。まず人々が健康であること。次に、病気になる心配がない状態になること。そうなるまで景気刺激対策は何もできない。経済において供給には相方、つまり需要が必要だ。健康でい続けられるという現実と、その実感の両方があることで、初めて需要が生まれる。

では、 封じ込め、検査、治療の3本柱に関して、よりよく、より速く対応するのを妨害したのは何だったのだろうか。

4月3日、米食品医薬品局(FDA)は医療従事者に対して、既に承認されているN95マスクの代用品になるとして、ウイルスの侵入と拡散を防ぐKN95マスクの使用をようやく承認した。KN95マスクは中国製だが、米国立労働安全衛生研究所が認定したN95マスクと同じ性能基準(新型コロナウイルスを含む0.3ミクロン以上の粒子を95%以上フィルタリングする)を満たしている。

また同日、米疾病対策センター(CDC)は感染拡大を防ぐために公共の場ではマスクや布で顔を覆うよう推奨した。医療従事者用にN95マスクを確保するため、一般人にはN95は勧めないとしている。

ここで2つの疑問が浮かぶ。まず、なぜ政府が常識的な勧告を出すのにそれほど時間を要したのか。そして、なぜアメリカ国民は政府に常識的な勧告を出させる必要があったのか。

平時なら取らないリスクを取る

1つ目の疑問に関して思うのは、専門家はマスク着用が100%効果的ではないことを知っているからこそ、市民には「確実ではないが念のためマスクをする」という発想ができるほどの「知恵はない」と考えていたのではないかということだ。

私たちは「平常時」に、医療関係者がN95ではなく普通のマスクを着用していることを知っている。マスクに意味がないのなら最初から着ける必要などない。使うのは、何もしないよりは明らかにましだからだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

景気判断16カ月連続維持、「緩やかに回復」=12月

ビジネス

英小売売上高、11月は前月比0.1%減 予算案控え

ビジネス

日銀総裁、中立金利の推計値下限まで「少し距離ある」

ワールド

与党税制改正大綱が決定、「年収の壁」など多数派形成
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末路が発覚...プーチンは保護したのにこの仕打ち
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 6
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 7
    中国の次世代ステルス無人機「CH-7」が初飛行。偵察…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 9
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 10
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中